過去ログ - 武内P「女性は誰もがこわ……強いですから」
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4: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/02/11(土) 16:52:43.36 ID:u9Op5e3S0
「ねえプロデューサー?」

「……な、なんでしょうか」


答える声が上ずっているのが自分でもわかります。


「美嘉と付き合ったりしてないよね?」

「…………はい?」


それはあまりにも想定外の質問でした。
呆気にとられたまま渋谷さんの意図を探ろうと見つめてしまい、視界の端でいつの間にか前の車が停まったことに気がつき慌ててブレーキを踏む。


「……うん。どうやら違うみたいだね」

「その……なぜそのような有り得ないことを?」

「有り得ないかな? だってプロデューサーと美嘉って、妙に距離が近いんだもん」


多分、私以外にもそう考えている人は何人かいるよと渋谷さんが続けるのを、頭を振って否定する。


「確かに……彼女は担当だった頃から不甲斐ない私を叱咤してくれました。担当ではなくなった後も、妹さんや後輩たちを心配してのことでしょうがよく顔を出しては助言をくれました。しかし城ヶ崎さんが私などにそのような感情を持つことはあり得ません」


そもそもプロデューサーである私が、彼女たちをそのような目で見るわけにはいきません。


「それにしても……渋谷さんにしても城ヶ崎さんにしても、なぜ私の交際関係をそこまで気になさるのでしょうか?」


この話題を続けるのはよくないと、ずっと気になってきたことを尋ねる。

プロデューサーって彼女いたことあるの? という具合に普段の会話の流れで聞かれるのならば気になりませんが、二人とも他の人がいない状態で真剣な様子で聞いてきたのです。
どうしても気になります。


「だって……プロデューサーってば優しいうえに押しに弱そうだから、変な女に引っかからないか心配だもん。お世話になった人がそんな目に遭うなんて嫌だし、美嘉もそうだったんじゃないかな」

「……そのように、思われていたのですか?」

「げんに大学生の頃はそうだったじゃない」


ぐうの音も出ない、とはこのことでしょう。
それにしても自分の年齢の半分ほどの子たちにこのような心配を持たせてしまうとは……情けなさに思わず肩が落ちてしまいます。


「ああっ、そんなに落ち込まないで。私たちが勝手に心配したことなんだから。ほら、そろそろ信号変わるよ」


渋谷さんはそう言って励ますように肩を撫でてくれました。
想えばこのように励ましてくれたり、プライベートのことを心配してもらえるのは、良き信頼関係を築けているからかもしれません。
落ち込むことばかりではないのでしょう。


「……まあそんなわけで、私たちはプロデューサーが変な女に引っかからないか心配なの。プロデューサーって大手346の出世コースで収入も良く出費もあまりしない三十歳前後の高身長イケメン、ていう悪い女がこれでもかってぐらい寄ってくる要素の塊なんだから」

「イケメンではなく強面、警察のお世話によくなる、身長は高すぎて幅もある……ではないでしょうか」

「何もしてないプロデューサーを疑う警察が悪いし、女より痩せてそうな男なんてタイプじゃないし……あと私、プロデューサーの顔は良いと思う」


お世辞だと分かっていても、人気アイドルにここまで褒められて悪い気はしない。
頬が赤くなっていないかと心配に思いながら、右折のタイミングを見計らう。


「……だからプロデューサー。もし誰かと付き合いそうになったら、一言私に言ってくれない? 同性だからわかることってあると思うから」


右折の最中であったため渋谷さんの表情をうかがうことはできませんでした。
しかしその言葉が私の身を案じてのことなのはわかります。
そうすることで渋谷さんが安心してくれるのならと思い、私はその提案を了承しました。


――三日後に、彼女の前で身をすくませながら一言どころか延々と説明する羽目になるとは夢にも思わず。


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