過去ログ - 武内P「女性は誰もがこわ……強いですから」
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◆SbXzuGhlwpak
[sage]
2017/02/18(土) 10:44:51.57 ID:NfQFDkL+0
何が起きているのかわかりません。
白坂さんが私の首に顔を近づけるところまでは予定通りでした。
しかし噛んだフリをするはずなのに、なんでしょうこの鼓膜に響いて身を震わせてしまう蠱惑的な音色と、頸動脈付近からかけめぐるひんやりとした熱という矛盾した存在は。
いえ、似たものに覚えはあります。
もう何年も前――大学生であった頃に。
しかしそれは今ここで、白坂さん相手に起きるはずがありません。
それなのに、私がこうして理解できず受け入れられないままなのを他所に、事態は進行し続けます。
「ちゅ……チュウウウッ……ハァ……ハァ……プロデューサーさんの汗の味、おいしいんだね」
「し、白坂さん……いったい、何を?」
ようやく私は情けないかすれ声で尋ねることができました。
首に手を当てると、湿った感触があります。
白坂さんはクスクスと笑うと、私の首に両手を回したまま鼻と鼻がくっつきそうになるほど顔を近づけ、無垢な瞳で私を見つめる。
「エヘヘ……プロデューサーさん、私に感染しちゃったね」
そう言うと今度は鼻先に唇を近づけようとするのを、慌てて制止します。
白坂さんは少し気を損ねた顔をしましたが、すぐに笑顔に戻ります。
――その笑顔は、幼いが故に禁忌を知らず、ためらわずに踏み込む危うい魅力が含まれていました。
「あの子から……話は聞いたよ。皆、考えすぎ」
話というのはやはり、私が問題のある女性に押し切られて交際するのではと心配されていることと、女性へのアプローチに慣れる必要があるということについてでしょう。
「プロデューサーさんは今の調子で、一生懸命仕事に打ち込んでいれば…大丈夫。プロデューサーさんの…そんな姿に惹かれた女性と、三年後に結ばれて……幸せになれるから、ね」
「そう思っていただけますか。しかし……」
初めて周りの懸念について考えすぎと言われ少し安心できましたが、三年という具体的な数字は何でしょうか?
尋ねてみると白坂さんは心底不思議そうに、そして愛らしく首をかしげて見せます。
「だって……私、まだ十三歳だから……プロデューサーさんと結婚するには、どうしてもあと三年は待たないと……」
「し、白坂さん……?」
気負いもなく、てらいもなく。
当り前のように約束された未来を語る白坂さんに気圧され後ずさろうとするものの、未だに首はつかまれたままで、何より先ほどから両肩が“なぜか”ヒンヤリとして重い。
「私に感染した証……消えそうになったらまたつけるから……他の人に言い寄られたら、それを見せてね」
これで変な女なんか私のプロデューサーさんに近寄れないからと囁かれ、窓ガラスを見れば首に痕が見えました。
キスマーク、でしょう。
まだ十三歳……そう思っていた少女の行動に愕然とします。
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