過去ログ - 一ノ瀬志希「フレちゃんは10着しか服を持たない」
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4: ◆Freege5emM[sage]
2017/02/13(月) 02:26:47.87 ID:bfxHdujzo

◇◇◇◇◇

知り合って一週間も経たないあたり、あたしはフレちゃん家へお茶にお呼ばれした。
最寄り駅まで行ったら、フレちゃんがそこから案内してくれるとのこと。

その最寄駅は恵比寿だった。西海岸で都会の免疫がついたとはいえ、
根が岩手育ちのあたしはまだしゃちほこばってしまう地名だった。

あたしは事務所にあった雑誌をいくつも広げて片っ端からスイーツ特集を調べた。
スイーツ特集は先輩アイドルも絡んでいたせいか、同期の佐藤さんから『ついにあの志希がやる気を出したか!』
と驚かれてちょっと気まずい思いをした。お友達への手土産を物色していたとは言えなかった。

結局あたしは、フルーツの淡い色が優しげなギモーヴを買っていくことにした。
お昼過ぎ、あたしが改札階に立つと、待っていたフレちゃんが気づいて遠くから手を振ってくれた。
フレちゃんは行き交う人の流れでも一際目立つ。まるでアイドルみたいに周りの人の目を集める。

それから東急の路線バスに乗り込んでまた少しおしゃべり。
『前は白・赤・青のトリコロールカラーで、もっとフランスっぽかった気がするんだけどなー』とのことだった。
商業地を抜けて住宅街に入ったばかりのバスストップで降りる。



宮本邸は異国情緒あふれる娘と対照的に、周りの住宅に溶け込んだ自然な外観だった。
バロック調だのロココ調だのが出てきたらどうしようと身構えていたあたしはちょっとほっとした。
しかしそのあたしの安堵は、ほどなくしてまた引き締められるのだった。

あたしがギモーヴの包みを渡すと、フレちゃんは『コーヒーと紅茶、どっちがいい?』と聞いて、
それから奥まった方にあるキッチンへ行き、あたしはリビングで布張りのアームチェアを拝借した。

インテリアは布と木で統一されていた。あたしは家具の造詣がまったくないので、
それらがどんな由来のものかはうかがい知れなかったけれど、
年季の入った木目がきれいに磨かれていて、長い間とても大事に使われていたことだけはわかった。

部屋の隅に小さなフォトフレームがかかっていて、そこにはフレちゃんが家族と思しき人と並んで写真に収まっていた。
真ん中でまぶしく笑うのは明らかにフレちゃん。現在の彼女とほとんど変わらない姿だ。撮られてから何年も経っていないんだろう。

フレちゃんのすぐ右には、パパらしき男性。黒髪の中肉中背で見るからに日本人という感じだが、
わざとなのか知らないけどギョロ目を大きく見開いていた。フレちゃんの眼力の由来が察せられた。

フレちゃんの左側には、金髪碧眼の女性が微笑を浮かべていた。遊びのあるフレちゃんのボブと違って、
こちらの女性は顎できっちりと切りそろえた古風なボブで、サガンやコレットの小説に出てきそうなマダムだった。
(もっともあたしは、フランス女流文学なんて事務所の相川さんが読んでるのを横目で眺めたことしかなかったけど)

家族写真って本当はこういうものなんだろうね。
残念ながら一ノ瀬家でそれを想像することは、あたしの頭脳をもってしても困難だった。


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