過去ログ - バレンタインと142's【モバマス】
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4: ◆S6NKsUHavA[saga]
2017/02/15(水) 00:54:27.10 ID:1QgkRSw80
「あの……プロデューサーが、この前ちひろさんからチョコレートをもらってるの、見ちゃったんだ。ほら、ちひろさん、しばらくお休みでしょ」
「そう言えば、旅行に行くって行ってましたねぇ。久しぶりの長期休暇だって嬉しそうにしてるの、ボクも見ましたけど」

 輝子の言葉に、幸子は相づちを打つ。ちょうどバレンタインを挟んだ一週間、休暇を取って海外に旅行に行くと言っていた。その間の事務作業は他のスタッフが代わりに行うと聞いている。
 二人の会話を拾って、小梅が後を続けた。

「それでね……ちひろさん、ちょっと早いけど、バレンタインだって言って、プロデューサーさんにチョコレートを渡してたの」
「プロデューサー、なんだか嬉しそうで……そしたら、なんだか私の中で、こう……モヤモヤしたものが浮かんできて……いてもたってもいられなくなってきて……」

 なるほど、と幸子は心の中で独りごちた。要するに、輝子はプロデューサーにチョコレートを渡したちひろにヤキモチを焼いているのだ。それで、対抗心を燃やして自分もチョコレートを贈りたくなった、と。
 輝子さんも素直なのかそうでもないのか分かりませんねぇ、と苦笑を呑み込みながら、幸子は代わりにため息をついた。

「分かりました! それじゃあ気合いを入れて選んで、プロデューサーさんをあっと言わせてあげましょう! ボクたちの、いえ、輝子さんのチョコレートで!」
「フヒ……あ、ありがとう、幸子ちゃん」
「お礼は選び終わってからにして下さい! まだまだ沢山お店を回らないといけませんからね!」
「う、うん……!」
「頑張ろうね、輝子ちゃん、幸子ちゃん」

 アイスの乗っていたコーンの最後の一かけを口中に放り込むと、三人は再び目の前の戦場へと足を踏み入れた。
 カタログで目星を付けたとは言え、回る店舗の残り数は二十はある。試食はここぞという所に絞り、三人は目を皿のようにしてショーケースの中を見て回る。
 ふと、輝子は一つの店舗の前で足を止めた。気付いた幸子が小梅とともに戻ると、彼女はショーケースに陳列されたチョコレートの一つに視線を固定している。

「輝子さん、良いの見つかりましたか?」

 そう声をかけながら幸子が輝子の視線の先を見やると、そこにはデフォルメされた可愛いキノコの形のチョコレートが陳列していた。軸の白い部分は共通で、傘の部分がカラフルに色づけされたチョコは、輝子のイメージには確かにぴったりだ。

「良いんじゃないですか、これ。ケースに入ってると高級感もありますし」

 輝子は彼女の言葉を聞きながら、ううんと唸っている。しばらくして、おずおずとショーケースに手を伸ばしたが、すぐに首を横に振って手を引っ込めてしまった。

「だ、ダメだ……やっぱり、これはやめよう……」
「どうして……? 輝子ちゃんらしくて、素敵だと思うよ……?」

 小梅も背中を押すように言うが、輝子はもう一度首を横に振ると、何かを決心したように言った。

「確かに、私のイメージにはピッタリなんだ……けど、そうじゃないんだ」

 振り切るようにケースから背を向け、彼女はポツリと呟く。

「私は、プロデューサーのイメージにピッタリなのを、贈りたいんだ……これ、ワガママ……かな」

 そう言って俯く輝子を見て、幸子と小梅は顔を見合わせると、二人して微笑んで彼女の背中をぽんと叩いた。

「何を言ってるんですか! そんなの、最高に決まってます!」
「うん……! きっと、プロデューサーさんも、喜んでくれるよ……」

 輝子は彼女たちの方を振り返ると、ふにゃっとした笑顔を浮かべた。そんな彼女を見て、幸子は「悔しいですけど、こういうときの輝子さんはボクと同じくらいカワイイんですよね……」と漏らし、小梅は嬉しそうにニパッと笑った。




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