過去ログ - 森久保「私に似ているプロデューサーさん」
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2: ◆8AGm.nRxno[saga]
2017/02/24(金) 09:09:33.90 ID:UKsbEgqz0
書きためてあるので手直ししながら投稿していきます。


3: ◆8AGm.nRxno[saga]
2017/02/24(金) 09:12:14.15 ID:UKsbEgqz0
俺の名前はP。とある小さなアイドルプロダクションに勤務している。

といってもプロデューサーという訳ではない。事務員の補佐をしたり、他のプロデューサーの都合がつかなかったときにアイドルの送迎をしたりしている。いわゆる雑用だ。

季節が来ればシーズンの仕事があるので事務の手伝いとしてそこそこ忙しく仕事をしているが、会社の業績が傾いてリストラという話になれば真っ先に切られる人員だろう。
以下略



4: ◆8AGm.nRxno[saga]
2017/02/24(金) 09:15:42.30 ID:UKsbEgqz0
今から4年前、大学生だった俺は就活に失敗した。

スタートは遅れ、履歴書に書けることは車の免許くらいなもので、加えて大学の単位にも追われていた。

切羽詰まった俺は手あたり次第に履歴書を送り付け、やっとの思いで一社の内定を確保した。それがこのアイドルプロダクションである。
以下略



5: ◆8AGm.nRxno[saga]
2017/02/24(金) 09:20:50.62 ID:UKsbEgqz0
最初の業務はアイドル活動の見学だった。研修の一環として新人に現場を知ってもらおうということだろう。

少ない同期と共にアイドルたちのレッスンを眺めた。レッスンは5人のグループで行われていたが、別にユニットを組んでいるわけではなく、デビューもまだらしい。

音楽に合わせて踊る。言葉にすればそれだけのことだが、俺の頭にはそれを遥かに凌駕する情報量が入り込んできた。
以下略



6: ◆8AGm.nRxno[saga]
2017/02/24(金) 09:23:02.63 ID:UKsbEgqz0
「あのっ、すみません!」

レッスンが終わって次の研修に向かおうとした俺たちに、さっきまで踊っていたアイドルの一人が声をかけてきた。

「私は…アイドルになれるでしょうか…デビューは…」
以下略



7: ◆8AGm.nRxno[saga]
2017/02/24(金) 09:24:35.79 ID:UKsbEgqz0
自慢じゃないが俺はなかなか友好的な人間だ。友達も多いし、気兼ねなく話せる奴も結構いる。

だがそれは意識的にも無意識的にも、俺と合わない人間を視界から締め出した結果だ。

例えば勉強ができる奴。なんにでも手を挙げる奴。これだと思ったものに一直線な奴。
以下略



8: ◆8AGm.nRxno[saga]
2017/02/24(金) 09:26:13.33 ID:UKsbEgqz0
入社して1年が経った頃、プロデューサーとして初めてアイドルを担当することになった。

彼女は明るい性格で、ダンスも上手く、そして情熱に満ちた目を持っていた。

仕事自体は順調そのものだったが、俺は彼女の目を見れなかった。
以下略



9: ◆8AGm.nRxno[saga]
2017/02/24(金) 09:27:23.79 ID:UKsbEgqz0
初めてのLIVE、他のプロダクションとの合同だが規模は大きかった。

楽屋で衣装に身を包んだ彼女は震えていた。いつもの快活な笑顔は無く、無理矢理張り付けたような微笑に不安が見え隠れしていた。

励ますべきだろう。だがどうやって。
以下略



10: ◆8AGm.nRxno[saga]
2017/02/24(金) 09:28:51.49 ID:UKsbEgqz0
初めてのLIVEの後、彼女はプロダクションを去った。

LIVEは大失敗という程でもなかったが酷い出来だった。呂律は回らず、足がガクついていてダンスは練習の半分ほどの実力しか出せていなかった。

合同ライブの広告塔である大手プロダクションが最後のトリを盛り上げてくれたためイベント自体は成功したが、彼女のステージは明らかに失敗だった。
以下略



11: ◆8AGm.nRxno[saga]
2017/02/24(金) 09:31:13.20 ID:UKsbEgqz0
彼女の一件以来、俺にプロデューサーとしての役が回ってくることは無かった。

アイドルとのコミュニケーションに著しく問題を抱えているとの評価を受けた俺は、事務員の補佐として働くことになり現在に至る。

不満はない。もともと向いていなかった。事務仕事は人並みにこなせているので、他の事務員も仕事が減って助かっているようだ。
以下略



12: ◆8AGm.nRxno[saga]
2017/02/24(金) 09:33:18.40 ID:UKsbEgqz0
その日はいつもの業務とは少し違っていた。
オーディションの合格者があいさつに来るそうで、施設の案内という名目で事務から人員が一人駆り出されていた。

つまり一人分の仕事を事務のみんなで切り分けるので、やることが増えるのである。

以下略



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