14: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/07(火) 16:04:01.47 ID:ibuo0eth0
なんでだろう。
この子が言うと、本当にそんな気さえしてしまう。
そんな訳がないのに。
けど、こんな風に人に優しい彼がどうして閉じこもっているんだろうか。
特に、彼の性格に問題があるようにも思えない。
「何か、聞きたいことあるみたい」
ヨシツキが言った。
まあるい瞳に吸い込まれて、言葉に詰まる。
「いや……なんにも」
「いいよ、気にしない」
知りたいとは思う。
でも、他人にどうこう言えるような人間じゃない。
きっと、女性として扱ってくれる彼が心地いいのかもしれない。
最初から、彼はどこかフェミニストかと思うような、幼くも甘いマスクをつけていた。
王子様を傷つけると分かっている質問はすべきじゃないし、彼の幸せな楽園を踏み潰すこともすべきじゃない。
そのマスクは私を気分の良いものに変えてくれる。
そのままでいいじゃない。
私も彼も、今日はたまたま会った。
たまたまそんな気持ちになっただけだ。
「ううん、ヨシツキの方が女の子みたいよ」
彼の表情が少し陰る。
「僕、もっとカッコよく生まれたかった。背が高くて、筋肉むきむきで、勉強できて、あ、あと、あごもがっしりした感じの」
「背が高くて、筋肉があって、勉強ができてもモテないわよ」
当事者が言うのだから、間違いない。
あごは知らないけど。
まあ、たぶんモテる要素じゃないと思う。
「モテたいわけじゃないよ。僕は男になりたいんだ」
「男じゃない」
「そうだけど、そうじゃない。あ、ううん、ごめんね変な事言った」
はぐらかしているのか、彼の意図していることがふっと会話から逃げた。
私は首を捻る。腕時計が視界の隅に止まる。
ああ、そろそろ勉強に戻らないと。
それに気づいてか、彼は立ち上がった。
「もう時間? 残念だなあ、せっかくお話しできたのに」
とたとたと私に歩み寄る。
幼児が大きなぬいぐるみを抱きしめるように、私の体をぎゅっと抱き寄せた。
「また、来てね、ミラ」
部屋を出た時、頬っぺたは真っ赤だったと思う。
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