33: ◆/BueNLs5lw[saga]
2017/03/08(水) 01:02:43.04 ID:o/YJ8tUI0
「しないの……?」
床に向かって、か細く彼は聞いた。
「少なくとも、私は君が言った言葉に同意はしない」
彼は顔を上げた。
とても、先ほどまで明るくお猿のようにはしゃいでいた人には見えない。
一瞬で、彼のアイディンティーを崩壊させてしまうようなものだったのか。
信じられないけれど。
私は、彼を勇気づける言葉を探す。
変だね。
それこそ、変だ。
コンプレックスをなんとかしたいのは、彼だけではないのに。
でも、彼を哀しませたくない一心で考える。
私は、きっと、彼にどうしようもなく恋をしてしまったんだ。
こんな彼に――。
「聞かなくていいんだよ。そんなこと。変とか変じゃないとか、どうでもいいことじゃない」
彼は瞳にうっすら涙を浮かべている。
きっと、苦労したんだろう。
「ミラ……」
「ヨシツキ、その判断はさ、議論にもならないくらいなの。確かに、ヨシツキは普通の人達が考える普通からははみ出したのかもしれないけど、ヨシツキが生まれて来た時に持ってたものなんだから、変もへったくれもないって。ただ、それでね、その自分以外の人の評価が、ヨシツキを将来どういう道に連れて行くのかは分からないけど、他人の評価なんてものは、その道を左にしたり右にしたり、歩いた道がどっちだったかを後で教えてくれたりもするけど、どっちでもいいんじゃない?」
彼は、少し言葉を噛みしめているようだった。
ミンチ肉のついた手で彼を抱きしめることができたら、どんなに良かったか。
「君が、いいなと思った方でいいんだよ。他人の意見があるから、ヨシツキは自分のあるべき姿を考えることができた。それだけ。だから、そこまで人の目を気にしないで」
自分でも驚くくらい舌が回った。
よし、これで彼のハートをわし掴みだ。
後は胃の方もわし掴めば完璧だわ。
「ミラ……あ、ありがとう」
白い雪兎のような頬が赤く染まっていく。
照れたのかしら。可愛い。
人に言うべき言葉が、自分に跳ね返って辛い所もあるけど。
彼が少しでも勇気づけられたらいいな。
「その、もう一つ、ミラに……知っておいて欲しいことが」
「うん、なに?」
彼が心を開いてくれたことが素直に嬉しかった。
「じ、実は……僕、女の子なんだ」
前言撤回。
やはり、ちょっと考えないといけない議題にぶち当たった。
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