5:名無しNIPPER[saga]
2017/03/27(月) 22:14:27.42 ID:4Rea9gbvo
「声が出せないのか?」
頭から被った布団の中の暗闇、奏の目に涙が滲んだ。
微かな震えに気づいて、プロデューサーは戸惑った。
「どうしたんだよ。急に、辞めるなんて、びっくりするじゃないか。なにか、嫌なことでもあったのか……?」
すすり泣く声が、布団の塊から漏れた。
その声は、以前の細く美しい声ではなく、太く、痰の絡まったような泣き声だった。
プロデューサーはぼんやりと、なにかを察した。
「病院、行ったか」
「行ってないわ」と、ようやく布団の中から返事が返ってきた。
「行けるわけない。こんなんじゃ、外にも出られない」
すすり泣きは、慟哭に変わった。
その泣き声は、ワー、オウッ、オウ、……こんなところであろうか。
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