3:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/31(金) 00:12:36.07 ID:n/U0KpIm0
ーー響子自宅ーー
ーー私、なんかすごいとこまで来ちゃった。 テレビで見るような人気アイドルに、まさか自分がなれるなんて。
ーーわたしが頑張れば、もっとみんなの笑顔が見られる。
ーーさて早速、明日のお仕事の準備をしなきゃ。
「......以上、五十嵐響子でお送りしましたー」
「はいお疲れさまー、響子ちゃん、来週もよろしくね」
「はいっ、ありがとうございましたっ!」
「オッケー、響子ちゃん、今回もいい演技だったね、次もよろしくね」
「はいっ!よろしくおねがいしますっ」
「...いいよいいよ、もっとこう、小動物のようなポーズ、できるかな?」
「こうですか?」
「いいね、良いのがとれた!」
ラジオにドラマにグラビアにと、響子はしばらくまとまった休みがない日々が続いた。
それでも彼女は愚痴ひとつ言わず気丈に仕事に励むが、普通なら音を上げてもおかしくない多忙さだ。
ーー事務所ーー
「ふぅ、疲れたな...」
「おつかれさまです......」
さすがに疲れているのか、普段よりも響子の声に張りがない。
「明日は久しぶりのオフだから、ゆっくり息抜きしてくれ」
「はい、おつかれさまですっ」
ーーガタンゴトン。
電車に揺られながら、響子はガラスに映った自分と目が合う。
ーー明日は久しぶりのオフだなあ、かれこれ1か月くらいだろうか、最近、まともに遊んだ記憶がない。
ふと携帯を開くと、芸能ニュースのアプリを開く。無機質なスマートフォンの画面には、とても賑やかな文章が自分自身を彩っている。自分は今最も話題のアイドルといっても過言ではないのかもしれない。
ーーわたしは、たくさんの人を笑顔にしたい、みんなの笑顔がほしい
<ほんとうに、それだけ?>
「えっ?」周りには聞こえなかったが、うっかり声を上げかけた。
<私、毎日頑張ってるじゃない、そろそろ自分自身にも>
<私自身が、ほしいものをーーー。>
どくん、と、胸が高鳴った。
響子はその性格と親からの信頼から、収入のほとんどの管理を自分自身の自由にさせてもらっている。といっても、浪費はおろかほとんど使われていないまま、その収入は口座に貯まっている。
けれどその気になれば、その辺の平均的な16歳よりはるかに贅沢することも可能なのだ。
ーーでも、だめだよ、そんなの。
ーーわたしは、ほんのすこし自分のために使えればいい。家族のみんなや、プロデューサー、ファンの人たち、いろんな人が喜んでくれることが、私にとっては一番ほしいものだから。
そう言い聞かせ、得体のしれないささやきから耳をふさごうとする響子に味方するように、最寄り駅についた電車がドアを開く音を上げる。
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