過去ログ - 響子「わたしのほしいものは」
1- 20
5:名無しNIPPER[sage saga]
2017/03/31(金) 00:16:44.76 ID:n/U0KpIm0
久しぶりに、弟たちとテレビ通話をした。他愛のない会話が、わたしの心を癒してくれる。

「じゃあお姉ちゃん、そろそろ寝るから、切るね。」

「うん!そうだ、お姉ちゃん」

「どうしたの?」

「今日帰り道で、近所のおばちゃんたちがお姉ちゃんのお話をしてたよ!」

ーーへぇ。私も地元ではすっかり有名なのかな。三重県の希望の星、なんてね。

「なんていってたの?」


「えーと、「きょうこちゃんももう下り坂」とか、「人気があったのも、まくらえいぎょうだったんじゃない?」っていってた、
どういういみかわからなかったけど」


暖房の利いた部屋なのに、体調も悪いわけではないのに、体がとても冷たくなった気がした。

「ーーそっか。」

「おねえちゃん?」

「ごめんね」

ーーかろうじてその一言を絞り出し、私は電話を切った。

手が止められなかった。

電話としての役目を終えたスマートフォンのブラウザを開き、響子は自分の名前を検索エンジンに尋ねる。

検索エンジンからの返答は、プラスの内容もあった。けれど、冷静さを失った響子には、自身についてのマイナスの記事しか見えなかった。


サイトを開く。


掲示板を開く。


蛇口をひねれば水が出るように、検索をかけるたびに不特定多数の負の感情があふれるのを、響子はただ眺めるしかできなかった。


ーーなんで?


ーーわたしは、みんなに笑顔になってほしくて、頑張ってきたのに。


ーーひたむきに頑張ってれば、きっと答えてくれると思ってた。


ーーみんなの笑顔がほしい。


ーーなんで、なんで手に入らないの?


ーーがんばった。休みも惜しんで、遊びも惜しんで、アイドルとして頑張ってきたじゃないか。


ーーほかのお友達は、遊びだったり、休みだったり、恋だったり、ほしいものを手に入れてるのに。私は何一つ手に入れられてない。


ふと顔を上げると、目の前の窓ガラスに映る自分の顔と目が合う。


<いいよね?>


今の彼女に、もう一人の自分の声を無視するすべはなかった。


<わたしだって>


甘美な心の声が、彼女の疲れ切った心にしみる。


<ほしいものが手に入ったって、いいよね?>


目の前の窓ガラスに映る目の黒色が深く感じたのは、夜の暗闇のせいなのか彼女にはわからなかった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
13Res/20.77 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice