1:名無しNIPPER
2017/04/02(日) 09:17:37.29 ID:8+rDTmig0
私の名を呼ぶ声が聞こえて我に返ったのですが、顔色は隠しきれず、心配をかけてしまいました。
声の主は、来月籍を入れる相手の男性です。海未、大丈夫か。
こわばった表情で私を見つめるその人の、私の肩に置かれた手の暖かみに、いつかの父の姿などを重ねてしまって、なんだか私の方がほころんでしまいました。
二十四になった春先、母の勧めでしぶしぶ引き受けたお見合いでしたが、私にはもったいないほどの方と巡り会えたものだと、こうした折にふと思い返すのです。
顔色を隠すのは相変わらず不得手ですが、手の中の、宛先不明で返ってきた手紙については、彼に悟られずに済んだようでした。
また、届かないだろうな、と諦めは心の内にありました。
それでも、私の人生の晴れ舞台には顔を見せてほしかったのですが、それも難しいのでしょう。
もう私の声なんて、あの子たちには、届かない。
その実感が肌にひたひたと迫るにつけ、近頃は手紙ひとつ送るのもためらうようになってしまいました。
あの子には、もう何年も年賀状さえ送れていません。
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