過去ログ - 橘ありす「その扉の向こう側へと」
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6: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/04/09(日) 15:37:39.92 ID:L8J356lk0
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「じゃーすびーまいせーるふ、しーんーじーたー……あ、プロデューサー。お疲れ様です。……お疲れ様です」
「ふふっ、おはよう、ありすちゃ……橘さん。どう?作詞の方はできそうかな?」
小声で歌っていたところを通りがかったプロデューサーは、にっこりと意味ありげに笑って見せてくる。
むっとして名前呼びに対して睨んでみたら、それは苦笑に変わった。
……私があの番組で流れた歌を口ずさんでいること、プロデューサーからすれば嬉しい事なんだと思う。それはわかる。
だけど、こっそりと歌っていたのが見つかって恥ずかしい私の気持ちも考えてほしい。私よりずっと大人なんだから。
「まだ悩んでます。だけど、前みたいな詩にはきっとなりません」
「そっか。……ところで、千早ちゃんに興味ある?」
「…………」
プロデューサーはわざとやっているのだろうか。
どうしてその話題を蒸し返すのか、もしかして恥ずかしがる私を見るのが楽しいんじゃないだろうか。
不満の念を強く強く視線に込めて、プロデューサーをじっと見つめる。
「……はい、タイミングが悪いなーとは思ってました。ごめんなさい」
しゅん、とうなだれて数秒。私が視線を緩めたその直後。
「でもね!もし興味があるなら、ぜひ見てほしいというか、見せたいものがあるの!」
一転プロデューサーは復活した。なんというか、こっちが呆れてしまう。
呆れてしまうのだけど、プロデューサーが見せたいというものは気になった。
「話は聞きます。興味は……まあ、あるので」
まあ、だなんて大嘘だ。
本当は興味なんて言葉で言い尽くせるか怪しいくらいに、あの人のことを知りたいと思っている。
そんな私の心情なんてきっと気づいていないだろうけど、それでも興味はあるという言葉に、プロデューサーは喜んでいるみたいだった。
……なんというか、ずるい人だ。
大人のくせに、こんなにも簡単に喜びを表現する。応えてみたいと思わせてくる。
だのにいざという時は私よりもずっとずっと大人なのだから。
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