90: ◆n0ZM40SC3M[sage saga]
2017/04/10(月) 16:50:26.22 ID:LzjXz4kL0
それから先は、混乱もあって、あっという間だった。
その華奢な指先で、ガヴが少々強引に私のあごをつまむ。
ガヴの顔が迫って来て、唇に何かが押し当てられる感触。
まるで熟れたオレンジのように薄皮に包まれたゼリーみたいな、それでいて確かな芯を感じさせるような。
私の顔にガヴの髪がかかり、ふわりと甘いミルクと、微かに汗の混ざったような匂いがした。
その香りは、天使も私と同じく生き物であることを感じさせた。
私が硬直していると、ガヴが少し顔を離した。
ガヴも息を止めていたらしく、そのときに私はガヴの温かく湿った吐息を感じた。
あまりのことに言葉が出てこない。
はたから見れば、二人してリンゴのように真っ赤になっていることだろう。
時が止まってしまったかのように、部屋は静寂に包まれていた。
聞こえるのは、心臓の音。
見えているのは、何か言いたげに口をもごもごと動かすガヴだけだ。
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