過去ログ - 魔術士オーフェン無謀編・死にたい奴から前に出ろ!
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2017/04/15(土) 02:47:12.53 ID:Ip5evVVC0
「って、俺が書くのか?」
「ああ、黒魔術士殿。よくお読みください……」
キースの言葉に、視線を再び書面に落とす。
言われるがままに精読すると、確かに『ボニー・マギーがオーフェンから金を借りた』ことを証明するものではなく、
『オーフェンがボニー・マギーに金を貸した』ことを証明するような書き方になっていた。
見ればオーフェンがサインを書き入れる箇所の隣には、連名でボニーの署名が既に入っている。
捏造した証文ではないという証明のつもりなのだろうが。
「ずいぶん変な書き方したな」
「黒魔術士殿とは無二の親友ではありますが、
ボニー様は私の主であるからして、主を立てるのは執事として当然のことですな」
「ああ、このような使用人を持てるなんて、わたしは何て果報者なのでしょう……」
「ふーん」
キースとボニーのやり取りを横目で見つつ、オーフェンは書状の表面に人差し指を置いた。
擦る様にぐい、と力を込めると――
案の定というか何というか、ぺらりと捲れた一枚目の下に、複写用のカーボン紙と2枚目の書状が挟んである。
どうやら全く同じ大きさに揃えた紙を、1ミリのずれもなく重ねていたらしい。およそ人間業とも思えないが、やったのはキースである。
オーフェンはクリップを外し、隠れていた紙を顕にした。
婚姻届とある。ちょうどオーフェンが1枚目の紙にサインすると、転写されたサインが記名欄に残るようになっていた。
いつの間にか動きを停止していた主従に、オーフェンは冷たい視線を向ける。
「……おい、ボニー?」
声を掛けると、ボニーはバネが弾けたような唐突さで動き出した。食堂の床を指さし、叫んでくる。
「大変ですわ! コギー姉様が倒れて!」
「さっき、思いっきり蹴っ飛ばしてたような気もするが」
「頭を打ったかもしれません! 早くお医者様に連れて行かないと……
というわけで、オーフェン様。わたしはこれで失礼いたしますね――」
言うが早いか、ボニーはコンスタンスの足を無造作に掴むと出口に向けて駆けだしていた。
女の細腕にしては異様な怪力であるが、
ボニーが足を踏み出すごとにコンスタンスの身体は揺さぶられ、食堂の椅子やテーブルをどったんばったんと豪快になぎ倒していく。
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