12:名無しNIPPER[saga]
2017/04/17(月) 12:07:19.05 ID:5I2Isvu00
「事務所ん空気の苦しか…」
「せやね…楓さんが、それだけすごい人だったってことや!」
鈴帆さんと笑美さんが、社内のカフェで話していた。プロデューサーさんの担当アイドルの中でも、かなり明るい女の子達だけど、やはり高垣さんのことで落ち込んでいる。
「こんにちは。ご一緒してもいいですか?」
「都しゃん」
「こんちゃ、都ちゃん!」
2人は、かなり無理をして笑顔を作ってくれた。私はそれに感謝して、席についた。
「お2人は、高垣さんと何度か話したことがあるんですか」
彼女たちの笑顔をふいにするように尋ねた。私も、彼女達と同じくらい深い悲しみを共有したかったから。
「ぎょうさんあるで! 楓さんは先輩後輩気にせんで、話しかけてくれるし。時間あるときは、一緒にお笑い見に行ったりすることもあったわ。もうずっと、前のことやけどな!」
笑美さんは、私の心が痛くなる笑顔で言った。私は、申し訳ない気持ちで苦しくなった。
「私はこの前、縫製を教えていげたちゃ!」
「縫製を?」
縫い物のことだろうか。たしかに鈴帆さんは、自分で着ぐるみを作るほどの腕前があるから、教えてもらうには申し分ないだろう。
「衣装を自分で作ってみたい、って言っとったばい!
……あげな人が、どうして」
そこで話は途切れて、重々しい空気が広がった。2人が明るく振る舞っていたのは、2人の悲しみが他の人に比べて軽かったわけじゃないのだと、私は実感した。高垣さんは、決して周りをかなしませるような人じゃなかった。だから、2人は無理をしてでも笑っていたのだろう。亡くなった高垣さんが、あの世で苦しまないように。
2人の想いに共感する一方で、私は自分でも恐ろしいほど冷静に、あの部屋のことを思い出していた。
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