28:名無しNIPPER[saga]
2017/04/19(水) 23:16:23.57 ID:t0Az6vrk0
プロデューサーとアイドル。シトラスの香水、ボタン、ジャケット、口論。レッスンも仕事もない休日、公園でハッカのパイプを吹かしながら、私は物思いにふけっていた。
いままでの情報をまとめると、高垣さんのプロデューサーが彼女の死の直前に部屋にいた可能性がある。しかし、それでもやはり他殺にこじつけるのは無理があった。
たとえば高垣さんをベッドに寝そべらせた状態で、無理やり睡眠薬と大量のお酒を飲ませれば、必ず身体のどこかにあざや、擦り傷などがつくだろう。警察としても、それを見逃すはずはない。あのボタンが部屋に残っているくらいだから、死体から自殺であったことは明らかなのだろう。
そうなると、この一件は自殺とみて間違いない……ただ、自殺に至る経緯だけが分からない。高垣さんの死の理由がわからないかぎり、彼女を愛した他のアイドルも、ファンも、立ち直ることができない。私は自分の好奇心に、そういう大義を見つけ、調査を続行することに決めた。
ただ、なんとも言葉にできない違和感を感じる。情報の収集が、なにかおかしい。
「おい、お嬢ちゃん」
顔を上げると、薄汚れたしたおじさんがいた。ホームレスだろう、と思って、どこかに行こうとしたけれど、彼の服装が気にかかった。スーツのジャケットをバラバラに切り裂いて、またつなぎ直したような、そんなへんてこな格好だった。
私がその場に固まっていると、おじさんは、たばこくれ、と言った。私はパイプを渡した。
「へへっ、ありがてえや」
「いいんですよ!」
たったいま買い換える予定ができたので、とは言わなかった。
「ふぅ〜生き返る生き返る……ってハッカじゃねえか!」
笑美ちゃんを呼びたくなるノリツッコミを見せてくれたあと、おじさんは私の横に座った。この場を離れたくなるほどの異臭がしたが、私は我慢した。違和感の正体がつかめそうだったから。
「お嬢ちゃん、あれかい。探偵ってやつかい」
「そうです…いや、今は探偵アイドルです!」
そう言うとおじさんは、346かい、と私に尋ねた。
「どうして分かったんですか!? おじさんも探偵ですか!?」
ホームレス探偵…! 私は、先ほどのまでの印象を撤回して、おじさんに尊敬の眼差しを向けた。しかし、おじさんは冷たく言い放った。
「そんな格好してるアイドルは346にしかおらん」
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