過去ログ - 安斎都「ドレスが似合う女」
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43:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 12:53:38.60 ID:0eIMi64y0
「…ええっと…フィリップ・マーロウの活躍は…色々な方が…翻訳しています…。有名なものでは…村上春樹さん…と…清水俊二さん…このお二方ですが…彼らの訳は…マーロウのやさしさが…わかりやすく…伝わってきます。一方で…生島治郎さんのマーロウは…ハードボイルド小説らしい…猛々しさが…伝わってきます…このちがいが…悪いというわけではなく…訳者によって…主人公の印象がかわる…興味ぶかい…」
 マーロウの話は、鷺沢さんらしく脱線していた。
 鷺沢さんだったら…どこかの古書店員のように事件を解決してくれるかも…。そんな不真面目な想像をしながら、私は鷺沢さんの話を聞きつづけた。



44:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 13:16:31.81 ID:0eIMi64y0
「ありがとうございました! 私には…小説をじっくり読む習慣がなくて」
「いえ…私も楽しかったです…」
 番組が終わったあと、控え室で鷺沢さんにお礼を言った。実際、鷺沢さんのレクチャーがなければアイドル生命が絶たれるところだった。
「推理小説や探偵小説は……読むのが難しいもの…ばかりですから…小説が好きという方でも…あまり…好まれないジャンルです…。でも…今日…安斎さんが…興味を持って…くれたなら…うれしいです…」
 それでも、なかなか小説を読む時間がとれませんね、と私が言うと、鷺沢さんは、
以下略



45:名無しNIPPER[sage]
2017/04/20(木) 13:38:21.01 ID:9Ks+JvI7O
読みにくい
あと作者叩かれたからって自演はみっともないぞ


46:名無しNIPPER[sage]
2017/04/20(木) 14:01:39.87 ID:+WZKq/JKo
作者じゃないけど面白いし気にならんぞ
このまま続けてどうぞ


47:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 14:18:57.40 ID:0eIMi64y0
私は、高垣さんのプロデューサーを人気のない会議室に呼び出した。もちろん、私のプロデューサーさんも一緒に。なにせ私には、バリツや柔道の心得がないから。
 高垣さんのプロデューサーは、すでに死んだような容姿になっていた。頰はこけ、髪はぼさぼさ。目は、どこを見ているのかわからない。足つきもふらついていて、とても仕事ができる状態ではないように見える。
「なんだ…安斎。楓の死について話すって…お前が何を知ってるんだ」
 まどろんだような瞳の中に一瞬灯った警戒の色を、私は見逃さなかった。
「高垣さんは、子どもを妊娠していた」
以下略



48:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 14:21:31.94 ID:0eIMi64y0
「高垣さんは、あなたとよく口論になっていた。担当の問題だけじゃなく、『プロデューサーの香水の匂いがきつい』、『長時間の仕事はしたくない』、『歩いていける距離でも車で送ってほしい』、そんな些細なことでも」
「…それが、妊娠していた証拠だっていうのか」
「いえ、それだけではありません。
 高垣さんは、死の2ヶ月ほど前、『お酒をやめる』と言い出したそうです。あと、香水をつけるのもやめてしまった。……飲酒は胎児に悪影響を与えますし、ラベンダーの香りは妊婦のホルモンバランスを狂わせ、流産のリスクを高めると言われています。
 ……そういえば、あなたは高垣さんの担当を外れたがっていましたよね」
以下略



49:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 14:31:27.94 ID:0eIMi64y0
「“なぜ、処分したはずだ”、そんな顔をしていますね」
 私がそう告げると、彼は顔をさっと下げた。やはり、この男は部屋にいたのだ!
「あなたは、高垣さんから部屋に呼び出された。高垣さんから相談されたんでしょう。
『私たちの子どもをどうしましょう』って」
 高垣さんのプロデューサーは、首を振った。ちがう、ちがう、と。
以下略



50:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 14:44:43.22 ID:0eIMi64y0

「あなたは高垣さんの部屋から去り、そして高垣さんは1人残された…たった1人で。
 後日あなたは再び、高垣さんの部屋を訪れた。部屋からまったく出てこない彼女を不審に思ったから。自分のせいかもしれない、そんな責任感があったのでしょうね。その時までは」
 高垣さんのプロデューサーは、まったく反応を示さなくなった。私はちらりと、後ろにいる助手を頼るように見た。何かあれば俺が守る。彼の目はそう語っていた。
「あなたは、亡くなっている高垣さんを発見した。でもあなたは、救急車を呼ぶ前に、自分が部屋にいた痕跡を消すことにした。自分が高垣さんの死の原因だと思われないために。
以下略



51:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 14:59:34.28 ID:0eIMi64y0
「次にあなたは、自分の香水の香りが残っていないか気になった。高垣さんの遺体に近づいて匂いをかいだり、部屋を調べたりしているうちに、あなたは思いついた。
『彼女がこの香水を使っていたことにすればいい』、と」
 この瞬間、高垣さんのプロデューサーは高垣さんを、本当に裏切ったのだ。高垣さんの死を、自分とはまったく関係のないものとして処理しようとしたのだから。
「あなたは高垣さんの遺体に、香水をたっぷりふりまいた。時間がたっても、簡単には消えないくらいの量を…高垣さんのベッドには、今もその香りが残っているでしょうね。
 そして、あなたは引き出しの中に香水をしまって、ようやく救急車を呼ぶことにした。その後は、大事なアイドルを失ったプロデューサーとして振る舞いながら。でも、あなたは心の中で、『あの女と関わりたくない』と思っていた」
以下略



52:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 15:10:42.93 ID:0eIMi64y0
「さらにあなたは念のため、あの日着ていたスーツを捨てることにした。…最近は服の繊維から犯人が捕まることもありますから。
 スーツを鋏で裂いて、会社からも自宅からも離れた公園に捨てたんですよね」
 私は、ホームレスのおじさんから買い取ったスーツを、高垣さんのプロデューサーに投げつけた。
「以上が私の推理です」
 私が話を終えると、高垣さんのプロデューサーは顔を上げ、身体にまとわりついたスーツをゆっくりはがした。そして、私の方を見た。
以下略



53:名無しNIPPER[saga]
2017/04/20(木) 15:23:19.97 ID:0eIMi64y0
「ふーん、それで?」
 高垣さんのプロデューサーは、笑みを崩さずに言った。すると私のプロデューサーさんが、彼を締め上げた。
「てめえは、高垣さんの死に責任を感じないのか!?」
 苦しそうにうめきながらも、高垣さんのプロデューサーは表情を変えない。
「責任って言っても、今のは安斎の勝手な推測に過ぎない。お外のゴシップ野郎でも思いつくレベルのな」
以下略



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