過去ログ - 早坂美玲「これからは、ウチらのターンだ!」
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◆S6NKsUHavA
[saga]
2017/04/30(日) 21:10:49.70 ID:D+4uS1fU0
「帰るんじゃなかったのか、美玲」
「……!」
社の屋上にしつらえられたベンチに座ってぼんやりと夕暮れ空を眺めていた美玲は、突然飛んできた声にびくりと体を震わせた。目の前に立つ人影を確認して、彼女はかすかに視線を動揺させる。
「わ、悪いかよ……ちょっと風に当たりたい気分になっただけだ! 今度こそ帰るからな! フン!」
そう言って勢いよく立ち上がった美玲を遮るように、プロデューサーは両手を広げた。思わぬ行動に不意を突かれた美玲は、思わず棒立ちになってしまう。しばしにらみ合うような構図になっていたが、ややあってプロデューサーは腕を下げ、表情を和らげた。
そして、美玲の中にあるモヤモヤに、正面から切り込む。
「シンデレラ選」
「!!」
彼の言葉に、美玲は一瞬泣きそうな表情で顔をしかめた。それを見て、プロデューサーは「やっぱりそれか」と呟くと、頭を掻きながら目の前の彼女を見つめた。
シンデレラガール総選挙、と銘打たれたソレは、彼らの所属する美城プロダクション・アイドル事業部で開催される大がかりな人気投票だ。在籍する二百名弱のアイドルが芸歴・人気に関わらず全員横一列でエントリーされ、ファン投票によって順位を決定される。上位の者には美城が主催するフェスを飾るテーマ曲を与えられ、更にその頂点に立つ者には一年間『シンデレラガール』と言う称号が付与される。会社の顔として起用され、名実ともにトップアイドルとなれるチャンス。それが、総選挙。
当然、既にトップアイドルと称してもおかしくないような人材がいる中で、頂点を目指すのは容易では無い。しかし、そこを目指す努力をすることで、個々のアイドルの輝きは一層まばゆいものとなる。そう言った信念の元に毎年開催されるソレは、今年で六回目となる。
投票自体の終了はまだ先だったが、昨日社内で中間発表が行われていた。これは各プロデューサーに奮起を促すために内部公開されたもので、一般には公表されていない。もちろん、アイドル達にも。
だが、そう言った情報は何処かで必ず漏れる。
「少し、話そうか」
そう言って、プロデューサーは美玲を元のベンチへと促した。何となく逃がしてもらえなさそうな気配を感じた美玲は、渋々ベンチに腰掛ける。隣に座ったプロデューサーはスーツのポケットから小さな缶コーヒーを取り出すと、一本を美玲に手渡した。「メロンソーダじゃなくて悪いな」と笑いながら言う彼に複雑な表情をしながら、美玲はソレを受け取る。五月とは言え夕暮れとなると肌寒く、手のひらに伝わるミルクコーヒーの熱は美玲の気分を幾分落ち着かせた。
カシュ、と言う音が重なり、二人は缶に口をつける。一気に煽るプロデューサーの横で美玲はちびりと舐め、甘さの中に潜む苦みの残滓に舌をしびれさせた。
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