1: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:11:18.98 ID:vBGUfo7C0
「もういいかい?」
壁の方を向いた菜々さんの声が事務所に響く。
「まーだだよ!」
返すのは複数の声、それぞれ別の方向からだ。
プロデューサーである俺の声もその中に含まれる。
ちなみに出所は机の下からだ。
今、俺は事務所を使ってアイドル達と一緒にかくれんぼをしている。
大の大人である俺が何故こんなことをしているのかというと。
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2: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:12:10.13 ID:vBGUfo7C0
回想
『もしもし、ごほっ、プロデューサーさんですか』
「もしもし、ちひろさん?その声、風邪ですか?」
3: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:13:10.69 ID:vBGUfo7C0
それで事務所のみんなに何をやりたいか聞いたら、せっかくなら事務所全体を使える遊びということでかくれんぼに決まった。
さて、いつ以来かというぐらい懐かしいかくれんぼだが、いざやってみるとなかなか面白い。
いつもの見慣れた事務所をどこなら隠れられるかと普段と違う視点でまわっていると、まるで知らない場所にいる感覚がしてくる。
4:名無しNIPPER[sage]
2017/05/06(土) 00:13:27.00 ID:1hSkhxPh0
ウサミン両親「もう(そろそろ孫の顔を見せてくれても)いい(んじゃないの)かい?」
5: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:13:57.56 ID:vBGUfo7C0
「いったん出るか……」
押し込んでいた体をもぞもぞと動かして、狭い空間から脱出しようとする。
が、動かない。服が何かに引っかかってしまったようだ。
6: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:15:00.90 ID:vBGUfo7C0
「……くん!Pくん!」
……。
「起きてください。Pくんってば!」
7: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:15:57.96 ID:vBGUfo7C0
前に見せてもらったウサミン星の制服(自称)とは違い、まともというか一般的というか。
どこかの高校の制服だったような気がする。俺の知識が正しければこれは千
「学校なんだから制服なのは当たり前じゃないですか。まだ寝惚けてますね、まったく」
8: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:16:40.63 ID:vBGUfo7C0
俺は事務所で年甲斐もなくかくれんぼを楽しんでいたはずだ。
それなのにどうして見たこともない学校の教室で寝ている!?
見ると、どうやら俺も教室にいる男子達と同じ制服を着ているようだ。
9: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:17:13.86 ID:vBGUfo7C0
「それに、さっきから何ですか『菜々さん』って。いつもみたいに『菜々』って呼んでくださいよ」
「え?」
「幼馴染なんですから」
10: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:20:13.91 ID:vBGUfo7C0
いやまあ、さすがにそれは冗談だけど。
でも夢ならいつか醒めるし、不思議現象なら焦ったところで俺には手段はないわけだから、ゆっくり考えていこうという気持ちになれた。
そんなわけで今は幼馴染の菜々さんに連れられて帰りながら、俺はこの世界について考えている。
11: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:21:11.74 ID:vBGUfo7C0
ともかく家に着いてしまったわけで、残念ながら帰宅デートは終わってしまった。
だが、そのまま帰ろうとした俺を菜々さんが呼び止めた。
「あれ?Pくんお昼食べていかないんですか?」
12: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:22:12.61 ID:vBGUfo7C0
「まさかご両親への報告より先に菜々さんの実家に来ることになるとは」
「なにか言いましたか?」
「いや、なんでも」
13: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:26:31.58 ID:vBGUfo7C0
「Pくん、そんなにお腹空いてたんですか?やっぱり食べ盛りなんですね」
食器を洗いながら菜々さんが笑う。
「菜々さ、菜々の料理が美味しいからだ」
14: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:27:52.79 ID:vBGUfo7C0
菜々さんは一度深呼吸してから、俺の目を見つめて、言った。
「Pくんはナナの夢が何だか、憶えてますか?」
憶えてはいない。俺は菜々さんの幼馴染としての記憶はないから。
15: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:28:53.05 ID:vBGUfo7C0
くっ、今の俺がプロデューサーだったら今すぐ合格出すというのに。初めてこの世界に文句を言いたくなる。
でも、そうか。いつもオーディションを受けにきてくれる子達は、こうやって大きな挑戦を前にした気持ちで来てくれてるんだな。
今の菜々さんの告白も、きっととても勇気を振り絞って教えてくれたことなのだろう。
16: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:29:30.63 ID:vBGUfo7C0
新たな決意を胸にした俺に、菜々さんは少し小さな声で言った。
「応援、してくれますか?」
「当然だ!」
17: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:40:43.27 ID:vBGUfo7C0
さて、昼ご飯に菜々さんの手料理を食べて安部家を出た俺は、せっかくだから外をぶらついていた。
この状況は、たぶん夢か何かの不思議現象だと結論付けてそれ以上考えるのはやめた。
考えてもわからないからだ。
18: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:41:29.55 ID:vBGUfo7C0
「でも俺、こんな場所まったく来たことないんだよな」
不自然に差し込まれた俺の実家を除けば、一つとして俺の知る建物はない。
はたしてこれは俺の記憶が適当に作った光景なのか、それとも実在するウサミン星の街並みなのか。
19: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:42:35.95 ID:vBGUfo7C0
時々奇行を繰り返しながらも、散歩は夕方まで続いた。
知らない町とはいえ、お店の品ぞろえが軒並み懐かしくてテンション上がってしまったからだ。
特に本屋に並んだアイドル雑誌は、今では伝説と呼ばれるようなアイドルが現役で表紙を飾っていたりとかなり興味深い。
20: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:43:22.95 ID:vBGUfo7C0
などと俺は浮かれていたわけだが、そのせいで、俺は気付いていなかった。
それは今だけの話ではなく、もっと前のこと。
菜々さんがアイドルのオーディションを受けにいくと言っていた時に、俺は気付くべきだったのだ。
21: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/05/06(土) 00:52:28.93 ID:vBGUfo7C0
その日の夜。
久しぶりにお袋の料理を食べた。
実家の風呂に入り、現実では俺が実家を出てから物置になった俺の部屋で横になった。
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