過去ログ - 【モバマスSS・速水奏】《Home》
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◆hAKnaa5i0.
[saga]
2017/07/29(土) 16:45:40.92 ID:vf2bp9nY0
奏はプロデューサーに頭を下げた。
それからLiPPSのメンバー1人1人にも頭を下げた。
休業中、心配してくれたアイドルたちに頭を下げた。
奏はもう一度、アイドルとして仕事がしたいと言った。
みんなは歓迎してくれた。
「どうして仕事を休もうと思ったのか、よかったら聞かせてくれないか?」
帰り道、プロデューサーの車の中で奏聞かれた。
「送って行くよ」と言われた時、今度は断らなかった。素直に頷いた。
奏は微笑んで答えた。
「不安だったのよ。どんなに頑張っても、頑張っても、みんなに認められても…いつかみんな離れていくんじゃないかって」
「それで全部放り出したくなったの。自分の元からみんなが離れる前に、自分から離れてしまえば楽になると思ったから」
「…でも、余計に苦しいだけだった」
奏はペットボトルの水を一口飲んだ。それから続けた。
「…休業中、たくさんの人に声をかけてもらったわ。本当にたくさんの人に、ね」
「事務所のみんなだけじゃなくて、ファンの人や、学校の友達…」
「私はーーー私には受け入れてくれる人がいる」
「それがわかったから戻ってこれたのよ」
奏は淡々と言った。
プロデューサーは黙って聞いていた。
「これで話はおしまい。『辞めた理由』と『復帰しようと思えた理由』ね」
奏が言い終えると、プロデューサーは少し笑った。
「休業中、俺の電話に出てくれなかったな」
「あら、嫌味?」
「嫌味。心配だったし、悲しかったからなーーー美嘉たちから話を聞いたけど、他のアイドルとはたまに会ってるって聞いたし」
「そう。ごめんなさいね」
「いいよ」
しばらく2人は無言だった。
奏の家の前に車を停めると、奏は助手席から降りた。
プロデューサーは「また明日」と手を挙げた。
奏も手を挙げた。
前と同じように、自然に微笑むことができた。
親愛と余裕が混じった、笑みだ。
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