559:名無しNIPPER[sage saga]
2018/03/05(月) 23:46:44.20 ID:IPOjTJqEo
「緊張、していますか?」
ステージの脇の暗がり、彼が丁寧な口調で話しかけてきた。
砕けた口調でないのは、今が仕事中だから。
私は、アイドル。
彼は、プロデューサー。
「はい、少し」
何せ、本当に久しぶりのLIVEだもの。
ここまで来るのに……そうね、血の滲むような努力をしたわ。
大好きなお酒も辞めた。
だって、そうでもしないと、歌声が取り戻せなかった。
「実は、私もです」
彼が、クスリと笑いかけてきた。
この笑顔に……何度も救われてきた。
いつも辛い時、苦しい時は、黙って、ずっと傍に居てくれた。
筋力も体力も落ちていたから、一緒にジョギングもしてくれたわよね。
「一緒、ですね」
そんな彼に、私も微笑み返す。
彼は、こんなおばちゃんになった私の笑顔を見たいと、そう言ってくれた。
あの言葉が無ければ、私は今、こうしてこの場に立っていなかった。
ううん、もしかしたら……なんてね。
「はい、一緒です」
彼が、私の手を取り、言った。
私の最愛のこの人は、きっと、私と同じ想いを胸に抱いているのだろう。
だからこそ、こうして私をこのステージまで導いてくれたのだ。
ふふっ、田舎で良い仲で静かに暮すのは、もっと後で良いものね。
「一緒に――」
最高の、ステージにしよう。
「――笑顔で!」
どこまでも、空の向こうまでも届く位の、歌を歌おう。
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