560:名無しNIPPER[sage saga]
2018/03/06(火) 00:03:10.11 ID:rZbIlTLeo
・ ・ ・
「――皆さん、今日は、来てくれて……ありがとうございます」
彼が私のために用意したのは、あの日、あの時の会場。
皆で食卓を囲んでテレビの映像で見た、その時の会場。
「ふふっ、私、もうおばちゃんになっちゃいましたよ?」
私の愛する人は、そのために、色々な無理をしていた。
彼が今まで築いてきた、様々なコネクションを最大限に使って。
会社にも無理を言って、彼が今担当しているアイドルは、私だけに。
本当に、彼は、‘私達’のために全てを尽くしてくれたのだ。
「……本当に、色々な事がありました」
会場から、すすり泣く声が聞こえてくる。
そして、多くの、応援する声。
それにつられて泣きそうになっちゃうけれど、私は、泣かない。
だって、私は、‘私達’のために最高のLIVEをしなきゃいけないから。
「……本当に」
瞳を涙で曇らせる訳にはいかない。
私達は、真っすぐ、前を向いて進まなければいけないから。
そうでないと、あの子達に、格好いい所を見せられないものね。
泣く事無く、笑顔で。
そうでなきゃ、彼が心配してステージに入ってきちゃうかもしれないわ。
「……」
チラリと、ステージ脇の彼の方を見る。
直立不動で、真っ直ぐに私を見つめている、彼の姿を見て、落ち着く。
もう、そんなに楽しみな顔をしないでください。
貴方は、プロデューサーでしょう?
それは、ファンの笑顔ですよ。
「――聞いてください」
聞いていて。
今の私の、アイドルとしての歌声を。
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