過去ログ - 【オリジナル・安価&コンマ】宇宙を駆ける者たちの物語
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名無しNIPPER
[saga]
2019/01/21(月) 23:24:15.27 ID:OBu1iGxQ0
ピピピッ。
携帯端末に通信が入った音がした。リヒトはそれを取り出し、映し出されたホログラムを見る。
「イチャイチャしてた時にゴメンね」
「茶化さないで」
開口一番で巫山戯るAI、ハロ。ツーサイドアップの緑髪が左右に揺れる。
「緊急の連絡だよ。至急ノアに帰還して、出航の準備を」
「…何で急に?」
こちらとしては、不満しかない。仕事であれば従うだけだが、休暇が消えるとなれば不満は出る。
「荷物が届いたの。それを、急いで送ってくれって」
「場所は?」
「火星だよ」
「…はぁ〜〜〜…」
目的地を聞いた途端、溜め息が出た。宙賊の出没リスクが高い場所だからだ。
もし交戦する事態に陥ったら。その時は危険なこと極まりない。
ノアに搭載したARMは今は全部で四機。ザムが三機と、スウィーパー――ノアを護る最後の砦――が一機。
護衛艦も存在しない状態で火星宙域を航行するのは、誰だって無謀と言うだろう。
「大丈夫!ハロが頑張って"交渉"したから、戦力は増やしてもらったよ!」
その言葉に続き、簡単なデータが送られる。護衛艦としてガートルードが一隻と、搭載したARMが二機。
追加で、貨物を殆ど搬出したことで生まれた余剰スペースに、ヴェンデッタが二機と輸送する機体、今回契約したらしいエースが乗るキュウビ――旧時代の御伽噺の生き物の名前だとか――が一機、詰まれるそうだ。
ここまでお膳立てされていたら、拒否権は無い。これが下っ端の辛いところである。
「…分かったよ。すぐ向かうから準備を進めて。燃料は特に多く」
「らじゃ!」
ホログラムが消え、端末を収納する。荷物を持ち、リヒトは席を立った。
「じゃあ、行ってくるよ」
「…死なないで」
心配したようにそう言う妹。情勢を知っているなら、今回の仕事の危険性は誰でも分かる。それだけ、危険だということだ。
「死ぬわけないよ。リーゼの花嫁姿を見るまで、死ぬ気は無い」
その言葉はジョークなのか、それとも。願望を含めながら受け取り、リーゼは微かに笑った。
「行ってきます」
「いってらっしゃい」
また、一人の時間がリーゼを歓迎した。
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