お嬢様「貴女たちは私の大切な――――」
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11: ◆TEm9zd/GaE[saga]
2016/05/09(月) 21:19:51.42 ID:s7UxX8Ak0
お嬢様「まあ……私が過去を話すことになるくらいの酷い過去を、貴女が持っているとは思えないけどね」ハッ


女奴隷「……私には名前が無かった」

女奴隷「正確に言えば、自分の名前を知らなかった……」

女奴隷「私の両親は、私が幼い頃……九年近く前に、殺された……らしい」


お嬢様「九年前……というと貴女が二歳くらいの頃ね。どう過ごしたのよ、それから。まさか、赤ん坊が自炊して、金稼ぎ出来るわけがないわ」

お嬢様「――! まさか……」


女奴隷「その反応は珍しい、と思う。……初めて話すからどういう反応されるか、普通どういう反応をするものなのか、分からないけど……。でも、多分、普通は親戚に引き取られたとか考える」

女奴隷「でも、多分、お嬢様の考えていることで、正解」


女奴隷「私は、私の両親を殺した男に拾われ、育てられた」


お嬢様「そんな……」


女奴隷「あの男は気紛れで通り魔殺人を起こして、気紛れで私だけを助けた。その時、財布や金目のものは持っていかなかったらしい」

女奴隷「だから、私の名前と分かるものが無くて、結局、私はこれといった名前をつけられることなく、約十年をあの男と共に過ごした」


女奴隷「おかしいと思わなかった? いくらなんでも先進国の子供が売り捌かれるなんて。ただでさえ、奴隷商は非合法で、影に潜むように活動しているのに、わざわざ、そんなリスクの高い真似するわけがない」


お嬢様「…………」


女奴隷「……日本では、失踪宣告っていうのが出されて、七年経つと死亡したのと同じ扱いになる。……つまり、私はもう、書類上では死んだことになっている」


お嬢様「……つまり、貴女は奴隷商に売られるまで、自分の親を殺した男と暮らしていたの? それも……貴女の社会的人権すらも殺した男と……」


女奴隷「……私にとって、物心ついたときに近くにいた大人はあの男だけだった。男はこの年まで私を育ててくれた。それに色々な知識を教えてくれもした」

女奴隷「まちがいなく、あの男は私の親だった」


女奴隷「でも……色々教えてくれたけど……男は愛だけは――人の熱のあつさだけは教えてくれなかった」


お嬢様「……はは……そう、よね。愛があったら貴女を奴隷商なんかに売らないわよね……。憎い、わよね……。そう、でしょう……そうだと言って」


女奴隷「憎んではいない、今も昔も……。それに、もうあの男は死んでいる、憎みようがない」


女奴隷「――重ねて言えば、あの男を殺したのは私。……だから、あの男に憎まれはしても、あの男を憎んではいけない……」


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