谷間の百合 (オリジナル百合)
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2: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 08:37:06.83 ID:Li1QhE+X0
――――ここは日淀村(ひよどむら)。中国地方にある小さな集落だ。数える程しかいない人口のこの村で、悲劇は起きた。
この村にいた子どもたちは、次々と病で死んでしまったのである。
生き残った大人たちは、この村にもともとあった風土病のせいだとみな口をそろえて言った。
過去にも、江戸から明治時代にかけて夏場の気温が異常に高くなった時期にもこの病が村の子ども達を襲ったらしい。
私は、黒い紐で束ねられた古い資料を枕の下に差し込んだ。
今まで、その病気で生き残った子どもはいない。
死に様はみなようようだったが、その奇病は幼い命を等しく奪っていった。
資料には最後にそう記されていた。
扉がノックされた。

「ミソラ、起きてる?」

「うん」

母が今日何度目かの見舞いに来てくれた。
もういいと言うのに、この間、私が目覚めてから気が気じゃないと言うくらい顔を見に来てくれる。
以前より痩せこけた母の頬は、ここ数週間食べ物をろくに口にしていなかったことを物語っていた。
私がその間ずっと意識不明の状態だったから、冗談ではなく、本当に食べ物が喉を通らなかったと言っていた。

「今日先生が、外出を許可してくださったの」

「ほんと?」

「ほんとほんと」

私が治療を受けたのは、村の唯一の診療所だった。
大きな病院に搬送しなかったのは、誰もが死を覚悟していたからだ。
この病気で生き残れるわけがないと。
診療所の若先生も驚いた顔をしていた。

「車いす持ってきたから、これに乗りましょうか」

「ありがとう」

母の手を借りて、覚束ない足どりで座った。


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