3: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/07/27(水) 09:01:18.96 ID:Li1QhE+X0
診療所に一つしかない病室の窓から見ていた風景に飽きてきたところだったので、嬉しかった。
母を仰ぎ見ると、笑いかけてくれた。
「陽の光を浴びたら、すぐに元気になるからね」
「うん、早くみんなのお参りもしたいから」
「ミソラ……」
周りにいた子ども達は、もうお墓の中にいると聞かされた時からその実感はない。
気丈に振舞っているように大人たちからは見えるかもしれない。
けれど、それは、ただただ実感が無いせいで。
なにせ、自分はこうして生き残っているのだ。
だから、他の子どもも本当は生きているんじゃないかと疑っている。
母と若先生以外は病室を訪れなかったけれど。
それでも、信じられない。
診療所を出ると、空は病室よりも眩しく感じた。
目を細めて、鼻で息を吸った。
肺が少し痛かった。
蒸し暑かった季節が過ぎた。
夏がもうすぐ終わろうとしていた。
病が流行るのは猛暑の時だけで、秋口には完全にその気配はなりを潜める。
聞きなれた車のエンジン音。
父の車だ。
「ミソラ、あのね……」
母がゆっくりと言葉を紡ぐ。
車が目の前で止まり、助手席から子どもが降りてきた。
線の細い印象の女の子だった。
表情はどこか冷たい印象を与えた。
短く切りそろえた髪が風に揺れた。
こちらと目が合った。
「今日から、家族になるナツだ」
父が笑みを浮かべる。
「ナツの方が、2つ年上だからお姉さんになるのよ……ミソラ?」
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