169: ◆H.Fr5Z660Y[sage saga]
2016/12/21(水) 00:19:14.15 ID:wr0Msrqc0
そして二人の間に続く沈黙を破るように突然響いた『ただいまー』の声。
買い物から帰ってきた母さんだ。
美波「あっ、私もお夕飯の仕度手伝わなくちゃ」
姉さんは慌てたように躰を起こすと、おぼんを持ってパタパタと下の階へと降りて行く。
少し染まった頬が見えた。
僕は手に残る感触に後悔の念に駆られながらその様子を見送ることしかできず、その場を動くことが出来なかった。
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今、僕は自分のベッドから、ただただ天井を見上げている。
あんなことをしたら気持ち悪い弟だと嫌われてしまってもしょうがない。
そう思った僕は、夕飯の食卓を家族で囲んでいる間も姉さんと目を合わせようとはしなかった。
さっきから溜息を繰り返して気持ちはどんどん滅入るばかりだ。
知らないうちに涙が溢れ頬を伝っている。
電気が消えた真っ暗な部屋の中、いつの間にか寝てしまったのだろうか。
静かにドアを叩く音で、微睡(まどろみ)の世界から呼び戻される。
美波「ねえ、起きてる?」
弟「あっ…、うん」
美波「今、平気かな?」
弟「うん…」
ドアが開いて入ってくる人影。
まだぼんやりとした視界と暗闇で姉さんの姿はハッキリとは見えなかった。
ドアが閉じて、一歩、また一歩と、躰を起こした僕に近づいてくる足音。
ベッドの上に腰掛けた姉さんは僕の肩を掴むと体重を掛けて押し倒してくる。
『えっ』、僕は咄嗟の出来事に思考が追いつかずに困惑した。
目の前に迫る端正な顔と、フワリと風に乗って漂う姉さんの香り。
今、何が起きてるいるのか分からない。
思考はショートしてしまったのか、全く考えることが出来なかった。
今は、包まれる香りの海に幸せだという事実をただ感じているだけ。
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