一ノ瀬志希「あたしとキミのイケないセカイ」
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6: ◆Freege5emM[saga]
2016/09/19(月) 23:57:15.34 ID:YmRrF0g1o

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あたしはヒトからはヘンな子に見えるそうだ。

パズルとか、テストとか、オトナがコドモのために作ったモノなら、あたしは3分で片付けて投げちゃう。
そんな調子でいたら岩手からアメリカに飛ばされて、何回か飛び級してドクターまで行っちゃった。

そーゆーの『ギフテッド』ってゆーらしい。神サマからの贈り物なんだって。
さてそれは、誰を喜ばせようとしたプレゼントだったのでしょーか?

少なくとも、あたし自身とパパとママは、このプレゼントをもらって、
あの時の夕美ちゃんと同じぐらい苦い表情を浮かべたと思う。



あたしはフツーになりたいと思った。世の中はきっと、フツーのヒトがやりやすいように回ってる。
『ギフテッド』なんて大きくて分厚いレッテル、自由人の志希ちゃんにはムサ苦しいんだホント。
で、日本に逃げ帰って、誰もあたしのコト知らない高校にもぐり込んで、ただのJKのフリしてた。

なのに、アイドルがあまりにも楽しそうだから、フツーのフリを破って、アイドルになっちゃった。



それで、アイドルとして最初のレッスン。
ボーカルはよかった。ビジュアルはまぁまぁ。ダンスはグダグダ。

しょうがないよね。あたし、インドア派だもん。体力がもたない……。

あたしはダンスレッスンから逃げ出した。
エスケープした後は、プロデューサーがお仕事してる部屋にこっそり隠れて、
プロデューサーがパソコンや書類に目を通したり、電話をかけたりしてるのを眺めてた。



あたしが物陰からじーっと眺めていると、
やがてプロデューサーの電話が鳴って――着信音からして内線だねぇ――
受話器を取ったプロデューサーの口から、あたしの名前が出た。

あ、コレ。
あたしがレッスンすっぽかしたって連絡が入ったんだね。

プロデューサーが受話器を置いた瞬間、あたしのカラダがぶるりと震えた。物音を立てちゃった。
プロデューサーと、あと他にお仕事してたヒトたちが、何事かとこっちを見る。

物陰から、あたしは顔を出す。プロデューサーと目が合う。
プロデューサーは、速くも遅くもないスピードでこっちへ歩いてくる。



あたしはプロデューサーにこっぴどく叱られて、おかげで一ノ瀬志希の名は、
この事務所中に『初回のレッスンの途中から逃げ出す問題児』として広まった。

それがあたしには、奇妙なほど心地よかった。

そうだよね。
ダンスレッスンから3分で逃げ出すアイドルは、フツーならとんでもない問題児だよね。
まだ『ギフテッド』とか見られたり言われたりしてなかった頃を思い出させてくれる。



……にゃははっ。
ココだ。ココからだ。きっと。




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