本田未央「絶対に許さない」
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50: ◆Freege5emM[saga]
2016/11/06(日) 23:25:23.82 ID:M+Cz0DUCo



「と、いうわけで! やってきました夢の国のリゾートホテル!
 お部屋は気品あふれるシンデレラルーム! えへへっ、未央ちゃん一足先にシンデレラ気分だよ♪」

未央は植物を模した曲線的な――ロココ調もどきの――意匠が並ぶ室内を見回して、
ベッドの上で行儀悪く飛び跳ねたり転がったりした。

未央が『シンデレラルーム』と評した部屋は、『夢の国』に併設されたホテルの一室で、
童話『シンデレラ』をモチーフにした、青を基調とする特別な内装が施されていた。
プロデューサーの懐は、それなりのダメージを負った。



「葛南(かつなん)って言うから、最初どこかと思ったけど、ここって東京――」
「ストーップ! ストップだよプロデューサー!
 ここ千葉県、千葉県だよ。ひあー、いず、ちば! おーけー?」
「……千葉都民のくせに」

プロデューサーの呆れ声に、未央はわざとらしく頬を膨らませた。

「なんだよー! 東京の事務所に通勤してるからって、千葉っ子の魂までは売り渡してないぞー!」

未央の唐突な地元アピールをプロデューサーが怪しんでいると、
それを察して未央が言葉を継いだ。

「前は、そんなに県民意識は強くなかったけど、
 アイドルデビューのときプロフに千葉県出身って書いたじゃない?
 それで、地元の雑誌とかラジオとかテレビとかに取り上げてもらううちに、
 愛郷心ってやつが芽生えてきたっていうか」
「それは、たいへんけっこうなことで」



プロデューサーは、ホテルの大きな窓から、外を見下ろした。
眼下に広がる夢の国は、入園開始時刻から少し経った頃。
蟻のような人出がそぞろ歩いている。

「で、あちらには行かないのか?」
「チッチッチッ、プロデューサー君は未央ちゃんをまだまだ甘く見ている!
 夢の国と言えど、地元ですから? もはや未央ちゃんの庭ですよ。
 前に年パス買ったときは、半年もたたず元をとっちゃったぐらい!」
「もう知り尽くしてるから、あちらじゃ満足できないってことか」

未央は両手の平を上に向けて、わざとらしくため息をついた。

「いーや、ぜんぜん。アイドルデビューしてからは行ってないから。
 いつの間にかあちこちリニューアルしてるみたい。調べてないけど」
「言うほど未央の庭じゃなかったな」



「逆に、私としてはプロデューサーと二人きりであっち行くの、気が進まないかなー。
 ほら、よく言うでしょ――『夢の国でデートした恋人は別れる』――って」
「その原因って、待ち時間が長過ぎて疲れたり気まずくなるから、だろ」
「らしいね。私は試したことないから、分からないけど」

未央は、シンデレラのベッドでごろごろぱたぱた動くのを止めた。

「何かを待つとか、何かを聞き出すとか、お仕事とか、
 そういうもっともらしい理由なんて、ないのがいい。

 私は、恋人同士みたいに、ただ二人っきりで一緒に過ごしたいからそうする、
 っていうことをしたいんだよ。プロデューサーと」



「お前、俺のことを『アイドルと二人っきりにしたらナニをするかわからない』って藍子に言ったよな」
「言ったよ。私はそういう目でプロデューサーを見てるけど」





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