モバP「大人ならば誰でも」
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34:名無しNIPPER[saga]
2016/11/19(土) 17:58:59.97 ID:56PYB9g50
 だからどうしたというのでしょう。

 私はそれが嘘だと知っています。

 ブローチを外し、編んだ髪を解き、頬を撫でた手の慈しみは、身体が、心が覚えています。

 花嫁衣装を着せたあの日と同じ、優しい所作。

 全ての瞬間で――破瓜の痛みさえ――私は貴方の愛を感じ、幸福でした。

 だからこそ、私は絶望したのです。

 貴方が見出した私の偶像を、私自らが貴方を誘惑して、汚させてしまったこと。

 挙句、貴方に、そのような嘘を吐かせてしまったこと。

 でも、その嘘に縋らなければ、嘘で固めなければ結ばれぬ想いだと分かっていること。

 懺悔など生温い、贖罪しようのない、成就。


 私は卑怯でした。

 後悔無き時はありません。

 私は、皆を裏切っています。

 表向きは、シスターであり、アイドル。奉仕者であり、偶像。


 私たちは、何事もなく振舞います。

 そしてその演技は、閉め切った部屋で二人、夜杯を酌み交わすことで、破られます。

 神の血を用いた、正気を失い合うための儀式。

 芳醇な香りに惑わされ、間違いがあっても仕方がないと赦し合うため。


 酒精を嚥下しながら――実のところ、私はこの上なく冷静でした。

 色欲に塗れてゆく私を、何処か遠いところから、もう一人の私の目で観察していました。

 


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