1: ◆agif0ROmyg[saga]
2016/11/15(火) 22:20:47.01 ID:voe9Y0vu0
アイドルマスターシンデレラガールズの、緒方智絵里のSSです。R18。
私、緒方智絵里はずっと、アイドルになって、強くなりたいって思っていました。
プロデューサーさんに育ててもらってアイドルにはなれましたけど、強くなる事はできませんでした。
今日もたった一人でステージに立ち、死に物狂いで歌ってパフォーマンスして、なおかつそんな余裕の無さを観客の皆さんには悟られないようにして。
そうして、やっとプログラムが全部終わった後、私は控室でプロデューサーさんを待っていました。
他にも面倒を見ている子がいるので、私ばかりに時間を使っていられないのは理解できています。
それでも、あの人が迎えに来てくれるまでのこの短い時間が、何よりも耐え難い。
もしこのまま置いて行かれたら、一人で帰らないといけなくなっちゃったら。
そう考えるだけでも足が震えそう。
しばらく待った後、彼が顔を出してくれた頃には、ちょっと涙ぐんでしまっていました。
よく気のつくプロデューサーさんには、もちろん見咎められてしまいますが……
私がどういう人間なのかもう全部知られてしまっているので、あえて問いただしたりはしません。
ただ、私の手を取って肩を抱いて、あの深みのある温かい声でねぎらってくれます。
今日もよくやったな、智絵里。
すごく緊張してたのに。ちゃんとできていたよ、いい笑顔だったよ。
そう言ってもらえてやっと落ち着くことができました。
もともと私は、大きな舞台に立って大観衆の前で歌ったり踊ったりできるような人間じゃないんです。
引っ込み思案で、友達を作るのも下手で、でもそんな私を良いって言ってくれるプロデューサーさんのお陰でなんとかアイドルをやれています。
ですから、こうしてアイドルとして彼のために働くのは私にとって最高に嬉しいことなのですが。
どうしても、終わった後には緊張と恐怖と不安の揺り戻しが来て、こんなふうに不安定になってしまいます。
しばらく彼に抱かれて、胸に顔を埋めて深呼吸して、それでやっと動けるようになりました。
控室を出て、手をつなぎたいのをぐっとこらえて、ぴったり寄り添うようにして駐車場へ。
車に乗り込み、エンジンをかけようとするプロデューサーさんの大きな手に、私の手をそっと重ねました。
プロデューサーさん。私、まだ寮には帰りたくないです。
一人になりたくないんです。
話す相手もいない大きな女子寮で無意味な時間を過ごす辛さを、彼は理解してくれています。
こんな風に女の子の方から誘うなんて、はしたない事かもしれませんが、別に今に始まったわけでもありませんし。
プロデューサーさんは私を拒んだりすることは絶対に無いので、今日も寄り道です。
賑やかな都心部から少し離れた地域。
前にも何回か訪れた、日本の町並みにはそぐわない、安っぽくてケバケバしい品の無い建物。
いわゆるラブホテルに、私たちは入っていきました。
車で乗り付けて、そのまま部屋まで誰にも会わずに行ける、このシステムは私達みたいな後ろめたい関係の人間にはとても好都合です。
いつも通りプロデューサーさんが部屋を取って、うっかり誰かとすれ違って顔を見られたりしないように、慎重に素早く入室。
広さに不釣り合いな、無闇に大きなベッドが中心に鎮座する部屋に入って、プロデューサーさんが隠しカメラも盗聴器も無いことを確認。
それでやっと、一息つけました。
スーツのジャケットを脱いでハンガーに掛けて、ネクタイを緩める仕草がなんだか色っぽいです。
ライブイベントが終わった直後に、男の人とこんなところに来るなんて。
アイドル失格ものですが……プロデューサーさんはそのことを口に出したりはしません。
それはもちろん、私が寂しさに押しつぶされないようにという配慮からのことでしょう。
でも、私のことが好きで私とするのが気持ちいいから、という理由も、あって欲しいな。
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