12:名無しNIPPER[saga]
2016/12/28(水) 23:23:38.95 ID:zTK2mWKQO
男「……」
ピッ。
女「……」
ピッ。
終電後特有の、各所から漂う「おしまい」の雰囲気。
発車予定のない電光掲示板、シャッターの降りた店、酒をコンビニ袋に入れてゆっくり歩く人、仲間たちと夜にたたずむ人。
各所からは「お気を付けて」「良いお年を」なんて声も聞こえてきて、普段よりいっそうその空気は強い。
同僚とも上司ともそうしてきたばかりなのだ。
後ろの影とて例外ではない。
男「さて、」
女「あのっ」
振り返って声をかけようとすれば、マフラーから顔を出した彼女がこちらをまっすぐ見上げていた。
……。長い睫毛と、光っている瞳。
射抜くとまではいかなくても、男の視線を磔にするには充分な何かが漂っていた。
女「その……ありがとうございました。色々」
見とれていた俺は話を譲ることになる。
視線はお互い外れないままだ。
女「その、なんと言っていいのか、なんてお礼をしたらいいのか」
男「ちょ、ちょっと。ほとんど大したことしてないでしょう。気にしないでください」
女「でも……」
でも、の先に続く言葉は、何となくわかる。
その言葉は、まず他人に出てこないだけで。
モノじゃなくて、気持ちが嬉しいとか。
偶然であっても、何となく親しみを感じたとか。
繋ぐ道理がなくても、少し名残惜しいとか。
わかる。
でもまず言えない。照れて恥ずかしくて難しくて。
女「んん、でも……」
そこからは続かないようだ。
俺の話をさせてもらおう。
男「よかったら、送って行きましょうか? 夜道、危ないですから」
女「……えっ。」
男「いや、その、迎えに来てくれる方や、自転車があるんであれば、いい、んでしょうけど、その」
俺は途中から何を言っているのやら。
一緒に帰ろう、だなんて学生以来なのに、サラッと言う力はどんどん退化している。
女「それは、その、えーっと、はう……」
また口がマフラーの中に隠れてしまう。
かわいらしいが、見るからに彼女は困っていた。
仕方ない、か……。
男「……分かりました。お家知られるのも怖いですもんね。くれぐれもお気を付けて」
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