勇者「淫魔の国で風邪をひくとこうなる」
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73: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2017/01/25(水) 01:10:46.55 ID:iCugq6SKo

奥のカウンター席に座って店内を見回すと、思っていたより客は少ない。
冬も終わって屋内に籠もりがちだったラミアも出て歩くようになって、様々な種族でいつもはごった返しているのに。
今、店内にいるのは勇者とサキュバスA、いつもの給仕と料理番、サキュバスが二、三人だけだ。

勇者「俺は、世界中を旅したけど……世界をじっくりと味わう事はできなかったんだな」

サキュバスA「世界は“飲み物”ではなく“美食”でしたのに。……ともあれ、今はまず腰を据えて乾杯としましょうか。“元”勇者の人間どの?」

勇者「ああ。……乾杯」

氷の浮かぶ琥珀色の火酒。
それを充たされたグラスには――――ある魔法がかかっていた。
ガラスに彫り込まれた細工がひとりでに動き、物語を演じている。
サキュバスAのグラスの中では、山羊角の生えた女が木の下で旅人をかどわかす様が、
まるで生きているかのようになめらかに動いて語られている。
“無声劇のグラス”はまた、場面ごとにその細工の色までも変わる。
情熱的な場面では赤く、たとえば哀しみに沈む場面では青くなると聞く。
しかし、悲劇を演じるグラスは存在しない。
喜劇であったり、淫魔におあつらえの場面であったりはしても、酒に哀しみを背負わせる事は、人間も淫魔も同じく嫌っているに違いない。



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