勇者「幼馴染がすごくウザい件」
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12: ◆y7//w4A.QY[sage]
2017/03/14(火) 15:43:00.29 ID:ngic1vLj0
我々は精霊神さまの御許に抱かれ、皆平等なのだ。
さあ、互いに手を取り、楽園への道を歩もう。

小鳥は歌えり 林に森に
見交わす われらの明るき笑顔

吹く風さわやか みなぎる日ざし
心は楽しく しあわせあふれ
響くは われらのよろこびの歌

バンドギア王国〈歓喜の日 一節〉


カケル「(虫唾が走る。嫌いなんだよな。こういう唄)」

大聖堂大広間。
咽せるような埃と塵が陽の光に照らされ、まるで粒子のような輝きで舞っている。
椅子に腰を落ち着かせたまま目線を向けると、教徒である司祭達が唄の合唱を行なっていた。

俺は、教会にはよっぽどの用事がないと近づこうとしない。なにも信徒を否定しているわけじゃない。神様信じてますっていうのが合わないからだ。

カケル「はぁ……」

俺にしてみれば税を尽くした贅沢な空間にしか見えないし、芸術はわかるが広大な物置ぐらいの感覚しかない。

大司祭「これは、これは。ベル様にジョル様ではございませんか」
ジョル「司祭。久しぶりじゃな」
ベル「久しぶり」
大司祭「本当に何年ぶりになりますやら、他の方々もやはり特別な日なのですね」
ジョル「他? なんじゃ、誰かおるのか?」
大司祭「えぇ。大陸中から高名な魔法使い様方が集まっておられます。お二方を含む五大魔術師様方が勢ぞろいしておられますよ」
ジョル「なんじゃと? あのワガママ娘達まで……」
ベル「そっちだと都合がいい。手間がはぶけた」

この人が大司祭というのも、嘘なのだろう。厄介な詐欺師に捕まったもんだ。
大司祭が広間にいるわけがないし、五大魔術師といえば、ミラなんかよりもっと上。雲の上、月とスッポン。この人達がその二人? そんなわけがない。

カケル「……あの」
ジョル「どうした、少年」
カケル「僕、もう18です」
ジョル「お、おぉ? もうそんなに? 童顔なんじゃな」
ベル「意外。私と同い年」
ジョル「まぁ、少年も些細な違いじゃろ」

些細だと言うのならばどうしてそんな無理に作った笑顔を浮かべているジジイ。
文句を言おうと口を開きかけるが、言葉は言葉にならずに舌先で解れてゆく。

忌々しいのはこの口だ、あぁ、忌々しい。

大司祭「こちらは……?」
ジョル「ワシとベルからこの子を推薦したい」
大司祭「は?」
ベル「はやく、選定をしてあげてほしい」
大司祭「お二方からっ⁉︎」

大司祭は、ただ無暗に驚いて、感心して、疑って、躊躇していた。百面相を1人で繰り広げている。
大司祭と向い合ったまま黙って突っ立っていた俺を見て我に返る。演技乙。

大司祭「その、選定には、万を超える人数が参加しております。ご存知でしょう?」
ベル「知ってる」
大司祭「受け付けと順番は公正な手続きを踏まえていただかないと困ります。いくらお二方といえど、不正は……みなさん、何日も待っておられますし」
ジョル「この子が女神様とお会いすれば意味はなくなるんじゃよ」
大司祭「はぁ?」
ベル「……五大魔術師全員からの要請ならどう?」
ジョル「なんなら国王様からでも……」
大司祭「は、はぃぃぃっ⁉︎」

ベルにとんでもないことを言われ、目を白黒させながら俺のことをまた、二度三度見上げしていた。あまりに異常な事態に、異様とも言える光景に、大司祭はただ、ただ呆然と立ち尽くしているように見える。

はっはっはっ、もうなんか迫真すぎて演技に見えなくなってきたぞ、壮大な騙し方だな。


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