勇者「幼馴染がすごくウザい件」
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28: ◆y7//w4A.QY[sage]
2017/03/16(木) 10:02:17.46 ID:KWdk4OjR0
- 魔王城 -

枯れ木がばかりの荒れ果てた荒野が見渡す限りの地平線まで広がっていた。
空にはワイバーンが無数に舞い、どんよりとした雷雲の下、ヒビ割れをしている大地は、長い間、雨すらも降っていないと思わせる。
大地に立ち入る者を嘲笑うかのように、奇声と鳴き声がこだまする。

城の主しか使うことの許されない寝台で、アリスは長い睫毛を揺らし目を覚ました。
白銀に輝く髪、そしてその中で輝く真っ赤な瞳。血管まで透き通ってしまうのではないかという雪のように白い肌は、彼女の全てを引き立てる方向へと働いている。
絵の中から抜け出してきたような容姿だ。
美の女神でさえも、魔王たるアリスの前ではひれ伏すだろう。

寝台の上に起き上がると、アリスは全身を映す鏡の前まで歩き、自身の姿と対峙していた。
目を閉じて、想いをめぐらせる。
真夜中の、黙想の時。
始まりはいつだったか、それすらも数千年という長い歴史の中では思い出すことができない。

まぶたを再び持ち上げて、自身の顔を見つめる。
どの角度から見ても十代後半。
生まれてから、もっと正確に言えば意識が覚醒した瞬間からこの姿だった。変わらない見た目で歳をとることはない、有り体に言えば不老不死なのだが、アリスは特権を喜ばしく思っていない。

生とは、なにか。
生とは、死があるからこそ成り立つのではないか。
儚さがあるから、美しいのだ。
――では、自分は、なんと醜い存在なのであろう。

起因するのは、自己を証明する要素の欠落。
アリスの胸には生に対する執着がまるでなく、いつもぽっかりと穴が開いた虚無感の中で生きていた。
いや、生きているというと語弊があるかもしれない。
ただ、魔王として君臨していた。

アリス「我はなんのために生きているのか。この疑問は、もはや我の魂の叫びであり、生きるよりどころでもあり、存在理由ですらある」

呟きには、激情と呼べるものの全てが詰まっていた。
想像してみてほしい、このアリスという魔王は、自身の存在理由が欠落したままに数千年という長い年月を過ごしているのだということを――。


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