勇者「幼馴染がすごくウザい件」
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30: ◆y7//w4A.QY[sage]
2017/03/16(木) 16:08:15.95 ID:KWdk4OjR0
- 城下町 商店街 -

人の波をかきわけ、最初の時のようにはぐれないように注意をはらいながら大通りの屋台が立ち並ぶ通りを抜けると、レンガ作りの家が並ぶ閑静な住宅地区へと入った。
しかし、やはり王都だ。
ミルー村みたいなクソ田舎では、人に遭遇するのも骨が折れるというのにどこに行っても人がいる。

ベニ「この住宅地を抜ければ、王城の門が見えてくる」

ちょっと待てやコラ。ここの先っていうとあの親指ぐらいの大きさにしか見えない城のこと? あそこまで歩かせる気? というか、なんで俺もホイホイついていってるんだか。
いや、これが終わったら帰れるという計算通りの行動の為だよ?

ジョル「転移魔法でも使えば一瞬なんじゃがの。王城は警備が厳しく、限られた者しか無理なんじゃ」
ベニ「五大魔術師は王宮に直属として仕える魔術師でもある。私達だけなら可能だけど、カケルとミラは無理」

どんっ。

と、不意に大き目の帽子を被った人とぶつかった。
しまった。
ジジイの方に意識を傾けているせいで人が多いというのを失念していまっていたらしい。体勢が不利だったのか、足がもつれたのだろう。尻もちをついて倒れていた。
背格好は同じくらいだ。やけに高めの声で謝ってきた。

「す、すまん、急いでてな」

帽子を深めにかぶり、表情を隠すようにしている。よほど慌てているのだろう、謝罪もほどほどにすぐにでも立ち去ろうとする気配がある。

カケル「……?」

なんとなく、興味がわいたので助け起こす際にまじまじと見てみる。
柔らかい輪郭に、長い睫毛、大きな帽子で髪の毛は隠れているが、たぶん金髪。

「ボクの顔になにかついてるか? 失礼だぞ」

居心地が悪そうに、ころころと表情を変えている。しかし、ボク? こいつ、本当に男か?
聞いてみるのもめんどくさいので、言葉を濁そうとしたその時だった。

ジョル「こ、こんな所で一体なにを⁉︎」
ベニ「抜け出した……?」
フラン「あらあらぁ」
カルア「ひ、ひ、ひ……」

「あ、あなた達こそどうしてここに⁉︎」

なぜか、俺のまわりをハエがブンブンと飛んでいると気がついたのは。
俺は世の中にどうしても我慢ならないものが3つある。
ハエとゴキブリとヘビだ。
ハエという生き物は睡眠時、そして食事の時に、けっこうな頻度で現れる。
その時のウザい度ったらない。星5が満点とすると星4はあげれるほどウザい。

ミラ「カケル、あの人って……」

黙れ人間界のウザい代表。俺は今、羽虫界のウザい代表と戦うために準備しとるんじゃ。
ミラの言いたいことは、この目障りなハエを退治してからゆっくり聞いてやろう。

俺はハエ退治に向けて、目を閉じて精神を集中しだした。

こいつ、すばしっこいわけではないが目を離すとなかなか見つけることができなかったりする、手強い相手なのである。
ブゥ〜ンという音を頼りに、黒い線をイメージして動きへ向ける意識を高めていく。

周囲の喧騒など耳にはいらない。外界と俺とは、今、完全に隔離された。

この世界には、ハエと俺しか存在しないのだ。


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