4:名無しNIPPER[saga]
2017/04/21(金) 19:19:39.66 ID:dh2cKL/j0
想定と真反対の要求を耳にし、体がひどく硬直する。
静寂が続き、光がだんだん不安げな雰囲気を放ち始めたのを悟って、ようやく話す内容が浮かんだ。
「……襲わない、のか」
「た、食べないって!」
ちっちゃな拳をきゅっと握り、光が否定を訴えた。
「えっと、というかだな、正しくないだろ。えっちな、ああいや、恥ずかしいこと……いや違う、フケツなことをお付き合いしてもいないのにするのってさ……
というか、欲望に打ち勝って乗りこなして見せてこそヒーローはヒーローっていうか……」
しかしその威勢は次第に弱まり、消え入りそうな程に声量が萎んだ。
いかにも年相応に戸惑った態度は、淫魔を名乗るには似つかわしくない。
「……今まで我慢してたんだけど、本能として欲望が強いって言うか……もう、我慢が苦しくて。
このままだと、本当に人を襲っちゃいそうなんだ」
相槌を打って告白を傾聴し、受け取った情報を総括する。
光は淫魔として生まれたというのに、宗教家でもその敬虔ぶりに呆れてしまうような禁欲生活を送っていたようだ。
過去には本性を受け入れて精を捕食し、折り合いをつけることも考えたという。
それでも、社会の規範たるヒーロー像への憧れを捨てられず、命を削る生活を選んだらしい。
かと言って意志では魔力の欠乏は埋められなくて、限界が訪れたのが事の顛末だったそうだ。
「ごめん、アタシの心が、身体が強くなかったせいで、秘密を守りきれなかった。
けど……プロデューサーさんが見てくれている間なら、きっと、理想と良心を失わずにいられると思うんだ」
罪を犯したことを悔い、許しを乞うような口振りで願う。
弱音を吐きたがらなかったヒーロー少女が、嗚咽を堪えて人に縋るだなんて――理想への挑戦を諦めない気高さに、すっかり感服させられた。
「俺で良いなら、引き受けさせてくれ」
策略を疑った事への後ろめたさは残っているし、監視役をする資格なんて無いだろう。
それでも、光が心強いと言ってくれるなら、付き添ってあげたいとも思っていた。
「ほ……本当か?
沢山迷惑をかけると思う。それでも、見張っていてくれるのか?」
首肯すると、光はみるみる笑みを取り戻した。
少年のように闊達な姿が、LIVEで見せるそれよりも眩しく映る。
どれだけ特異な存在であっても、その笑顔には見る者に力をもたらす活気があって、気付けば俺も頬を緩めていた。
「ただ、だな」
「うん?」
「疲れるならその格好のままで良い。ただ……」
谷間まで露な胸元から目を逸らし、かねてから懸念してたことを耳打ちする。
休憩室へ担ぎ込んだ時以上に光は赤面し、ベッド上に飛び乗った。
「み、見苦しい物を見せてごめんっ! 今どうにかするから、ちょっと待ってて! 変身!」
ポーズを取ることもなくそう叫ぶと、光の体が薄桃色に輝くベールに包まれた。
痴女の装いから瞬く間に私服に戻るのを目の当たりにして、そういう仕組みかと、どうしてか落ち着いて納得していた。
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