6:名無しNIPPER[saga]
2017/04/21(金) 19:22:14.58 ID:dh2cKL/j0
こうも薄弱な俺であっては、いつか光を傷つけるかもしれない。
胸にのし掛かる息苦しさと対話して、担当を降りることも考えた。
が、もしそんなことをしたら、困難を分かつ仲間を求めていた光が孤立してしまう。
俺よりずっと強い衝動に抗っているはずの彼女を見捨てて、どうして俺一人逃げてよいのか、いやよくない。
正体を話せる人間を失ったとき、光はどれだけ悲しむか――そう思えばいくらか耐えられはしたが、限界は目前に控えている。
逡巡のあまり不眠に陥り、LIVE前の多忙も相まって、俺は仮眠室の常連となっていた。
当日まで考えていても解決策は見つからず、途方に暮れたまま舞台を鑑賞。
光がスポットライトを浴びて宝石のように輝きを反射し、客席に向けて煌びやかな栄気を送り届けていた。
「みんな、アンコールありがとうっ! じゃあ、次で今度こそ本当のラストだぁーーっ!」
叫び、床を力強く踏みならす。
合図に合わせて曲が流れ、腕を突き上げて強烈にシャウト。
連日積み重ねたレッスンの成果が表れた一挙手一投足を観て、ファン達は時折嘆息を漏らし、またある時は熱狂を吼えた。
あらゆる好ましい感情を浴びて倍返しする光は、まさしく生きた太陽のよう。
そんな彼女に卑しい視線を向ける男なんて、日の当たらない場所にいるべきなのだ。
以前なら積極的に彼女の前から排除していた存在に成り果ててしまったことに、ひたすら自己嫌悪を覚えていた。
心の淀みに足を取られるうちに、大盛況のLIVEは無事閉幕。
諸関係人物への挨拶を済ませ、一仕事終えたヒーローを回収し、車を出して女子寮に送った。
「じゃあプロデューサーさん、おやすみなさい! 最近顔色悪かったから、しっかり寝て欲しい!」
「ああ、おやすみ。
一徹もすれば作業も片づくから、その後ゆっくりそうさせてもらう」
「作業って、経費の計算とか、ブロマガとか、だよな……。
お気楽なことを言っちゃったかな」
「そんなことはない」とだけ告げて別れ、車を走らせて事務所に戻る。
そうしてデスクについたはいいが、言ったようには作業が進まない。
頭蓋骨に蒸気が篭もったように思考が霞掛かり、簡単な作業から片付けようにも、五分と集中が続かない。
睡魔に脅かされて船を漕ぐ有様に陥っていると、隣席から不安そうな声で提案。
「あの、一度休んだ方がいいんじゃありませんか?
今日までずっと働きづめでしたから……少し息抜きしないと、能率だって悪くなっちゃいます」
作業を手伝ってくれている千川ちひろ事務員の声ですら、聴覚が鈍ってるのか水中から訊いているようだった。
「お気遣いありがとうございます。
また、借りていいですか」
仮眠室を指さす、渋りつつも首肯してくれた。
「……ほどほどにしてくださいね? プロデューサーさんが倒れちゃったりしたら、事務所の皆も悲しくなっちゃいますから」
申し訳なく思いながらも、気力を振り絞って区切りがいい所まで片付ける。
PCを落として仮眠室に入り、スーツも脱がず大の字になってベッドに倒れ込んだ。
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