29: ◆JfOiQcbfj2[saga]
2017/05/07(日) 01:30:07.91 ID:upUN87ha0
夕食後、沙紀は満足げにお腹をさすっていた。
「いや、冗談じゃなくて本当にお嫁さんに欲しいって思いましたよ、うん」
「もう、恥ずかしいですよ」
テーブルの上には恐らく料理が飾られていたであろう皿が並んでいた。どれも綺麗さっぱり完食されている。
「ごちそうさまでした」
「はい、ごちそうさまでした。ちょっとあっさりな感じでしたけど大丈夫でしたか?」
「あっさりなんてとんでもない。凄く美味しかったし満腹っす」
それならよかったです。と響子はにこりと笑う。その笑顔に若干ドキッとしながらも沙紀は思いついたように言う。
「流石に何でもしてもらうのは悪いから、皿洗いぐらいはするっす。いや、させてください」
「え?大丈夫ですよ?これぐらいすぐに洗いますから」
今回は沙紀は譲らなかった。
「いや、何でもかんでもしてもらうのは性に合わないっす。それにアタシ達もう、あーその、恋人じゃないっすか」
瞬間、響子は驚きながら顔を赤くする。沙紀も同じだ。
「うぇ!?あ、は、はい……そぅ、ですね」
赤面している響子を見ながら、沙紀は少しだけ慌てながら滅茶苦茶に言葉を繋ぐ。
「だ、だから、こうお互い支え合うというか対等な関係というか……ああ、もう、とにかく洗わせてください。というか洗う、洗うっす!」
よくわからない言い切り、というのだろうか。それが少しおかしかったのか顔は赤いままに響子はくすっと笑った。
「それじゃ、お言葉に甘えちゃいますね」
「アタシに任せて響子ちゃんこそゆっくりしててください。お互い明日レッスンだったっすよね?」
「そうですね。あっ、そしたらもうこんな時間ですしよかったら泊って行ってください。寮のお風呂は事務所に所属しているアイドルの方なら使えますし、洗面用具も着替えも私のでよければ使ってもらって構わないので」
それは魅力的な提案だった。外は既に暗く正直事務所に近いこの寮だったら今から家に帰るより遥かに明日が楽であることは明確だ。ただ、先程あんなにまぐわったことを考えると少し恥ずかしさもあった。それに図々しい感じもあり先を悩ます。
「……そうっすね。響子ちゃんの迷惑じゃなければ」
しかし結局楽な方を取ってしまい頼み込む形になった。唯一の救いは返事を聞いた響子の嬉しそうな表情が見れたからことだった。
「じゃあ、皿洗いしてくるっす。いいすか?ゆっくりしててくださいよ」
「はーい。じゃあ、お願いしますね」
見送られて台所に立つ。不思議な感覚だ。
(皿洗いしたことがないわけじゃないっすけどね)
共同作業の様なそんな雰囲気が初めてなのだろうと自己完結して沙紀は作業に取り掛かった。
皿は割らなかった。
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