『このすば』カズマ「アクアがママになるんだよ!」『R-18』
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3: ◆BAKEWEHPok
2017/05/30(火) 22:47:59.92 ID:paYwonY3o
「そんなに怖かったのね……よしよし、大丈夫だから」

けれども、そんな俺をアクアは笑ったりせずに頭を撫でてくれていた。
怖い夢で泣いている子供と母親そのものなのに、恐怖のほうが勝っていて撫でられるがままだった。
アクアの優しい微笑を見ていると、心安らいでいるのが実感できる。
凄く女神っぽくて、ついまた涙を流してしまう。
今日ばかりはめぐみんとダクネスが泊りがけの用事でいなかったのがよかったかもしれない。
こんな顔、仲間にはあまり見せたくなかった。
アクアは……まあヒロインポジでもないからノーカンということにしよう。

「しょうがないわねえ。カズマ。ほら着替えよ」
「うん……」

タンスへ引っ張られて俺の着替えとタオルを持ってからまたベッドへと逆戻り。
ほんの数秒間でも離れがたくて、俺は手を繋ぎっぱなしだ。

「こんなに汗かいちゃって……ほら拭いてあげるから脱ぎなさい」

ますます子供のように脱いでもらうのを手伝ってもらいながらも、汗をタオルで拭いてくれた。
乾いたタオルとちょっぴり冷たいアクアの手が気持ちいい。
甲斐甲斐しく世話してくれるアクアがこんなに優しかったことは記憶にない。
極稀に見るアクアの優しさが身に染みるようだ。
いつもこうあってほしい。でも今の俺ならいつものアクアでもきっと助けになっただろう。
そう思えるぐらい心弱っているようだ。

「はい、おしまい。ただの夢だから元気だしなさいなカズマ」
「ぁ……」

身体を拭いて着替えさせてもらった後、立ち上がろうとするアクアを目で追いながら、か細い声を俺はあげてしまった。
数秒の、酷く長く感じる沈黙。

「…………もしかして一人で眠れないのかしら?」
「う……」

鈍いアクアにすら伝わってしまったのだろう。
問いかけに俺は横を向いて恥ずかしくなってしまう。
あの夢をまた見てしまう事を想像しただけで、恐怖でいっぱいになりそうなのだ。
以前の俺ならば、日本にいた時にニュースやネットでたまに見るようなこういう事件に対して、許せない犯罪だ。
そんな事する奴がいたら俺がぶちのめしてやるなんてうそぶいていただろう。
けれど、もしまたメスオーク達に囲まれようものなら、今の俺では小便ちびって泣きながら逃げるぐらいしかできないに違いない。
そう思えてしまうぐらい恐怖が根付いてしまっている。

「うぅぅ……な、わけ、ねえだろぅが……」

言ってて説得力がまったくない。
今度こそ笑われる。
プークスクスとか笑われながら、きっと面白おかしく俺の醜態をめぐみんとダクネスに伝えられる。
挙げ句の果てには、冒険者ギルドの奴らやアクセルの街中にまで広められてしまうのだ。
……もう風となって消えてしまいたい…………
恐怖と羞恥とわけわからなくなりながら絶望してる俺に

「しょうがないわねえ。ほらほらもっと詰めなさいよ」
「え……?」

アクアは苦笑しながらも、ベッドへころんと寝転がった。
俺の上半身を優しく倒して一緒に寝かせるようにして。
しかも、なんでもないように俺の顔を胸元で抱き締めながらも!

「まだ汗っぽいわね、浄化もしてあげるから寝ましょ」
「え、ええ……?」

顔に当たる胸の感触。
押し付けない程度にふんわりと抱きしめてくる。

「ま、待てよ、これは幾らなんでも近すぎだろ」
「なによー嫌なの? 私が抱きしめてあげてるのにカズマは嫌なの?」

違う。何故か嫌じゃないから困るんだろうが。
たまに女神っぽい所は見せるけど、普段の様子からするとキャラが違う。
というか大崩壊だ。

「……だ、だってアクアこんな優しかったか? 夢でも見てるのか俺?」
「オークじゃなくて別の夢見れてるならいいんじゃないかしら? それよりも私にもっと感謝しなさいよ」
「だけどお前いつもと違いすぎだろ」
「んーそれを言うならカズマも違いすぎなんですけど。おかしいんですけど。
 ……でも言われてみれば私もおかしいかもね……なんでかしら」

あっさりとアクアは俺を抱きしめるのをやめてから、反対を向いた。
シーツごと持っていかれて、心よりも物理的に寒い。
しばらく、コロコロと揺れて考え込むように唸っている。
だから寒いって。


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