268:名無しNIPPER[saga]
2018/03/24(土) 18:14:58.90 ID:f2KwpAYj0
その後、休憩をはさみながら次々と罠を回収していったが、罠は空だったりただの野生の小動物が掛かっていたりもした。
野生動物だった場合、おじさんは衰弱した様子が無いか確認した上で逃がしてやっていた。
おじさん「次の罠で最後になります。もうひと踏ん張りといきましょう」
男が腕時計を見ると十一時を少し過ぎた頃で、このまま順調にいけばおじさんの見立て通り昼には作業が終わるだろう。
やがて罠に近づいてきた時、何か金属が鳴る音と共にアライさんとアライちゃんのものと思われる声が聞こえてきた。
アライちゃん「おかあしゃん、おかあしゃん、まだでられないのだ?」
アライさん「さっきからたくさん蹴ってるのに全然開かないのだ…。なんでこんなに硬いのだぁーー!」
箱罠の中にアライさんがいて、外側から一匹のアライちゃんがそれを見ているという形だ。声の大きさや比較的活発な動きからするに、
罠に掛かってからまだ余り時間が経っていないとみえる。箱罠の天井は低いので、アライさんは横向きに寝そべっているといった姿勢だ。
おまけに横幅はアライさんがギリギリ通れるくらいしか無いので、膝を折って蹴るといった動作がしづらいらしく、
蹴るというよりは単に足で押しているだけといった感じだ。あれでは到底塞がった入り口をこじ開ける事は出来ないだろう。
もっとも全力で蹴ったとしても問題ない強度なのだろうが…。
先に外にいるアライちゃんを始末した後、アライさんをさっきと同じやり方で処分するのだろう。
とそう思っていた矢先、おじさんはリュックから袋を出した。アライちゃんは生け捕りにするのか?
アライさんは自分の足先ばかり見ていたので、まだ人間の存在には気が付いていない。
しかし地面に尻をつき、脚をまっすぐ伸ばして座っていたアライちゃんはこちらに気付いたらしく、首を傾げながら言った。
アライちゃん「のだ?…おかあしゃん、だれかきたのだ?」
アライさん「なんなのだ?……人間なのだ!?ちびぃ!早く隠れるのだ!」
アライちゃん「なぜなのだ?それにおかあしゃんをここにおいていけないのだぁ」
アライさん「いいから早く行けなのだあーっ!人間に捕まってしまったらタダでは済まないのだ!」
アライちゃん「いやいやなのだ!おかあしゃんのそばにいたいのだ!はなれたくないのだあ!」
アライさん「ばか!そんなわからずやはウチの子じゃないのだあ!!」
アライちゃん「!?…ひどいのだ、なんでそんなこというのだぁ…?アライしゃんはおかあしゃんがすきなだけなのだぁ…」
アライさん「ああああ!!とっとと行くのだ、ちび!!……人間っ、こっちに寄るななのだあ!!」
親の言う事は何でも聞くのかと思っていたが、そういう訳でもないらしい。ぐずぐずしてくれた方がこっちの都合は良いけどな。
おじさんは両手で目をこすりながらベソをかいているアライちゃんを掴み上げ、袋に放り込んだ。
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