鷺沢文香「アッシェンプッテルの日記帳」
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16: ◆ao.kz0hS/Q[sage saga]
2017/10/08(日) 00:11:13.94 ID:1nHzinqN0
ですが、三日前の私は猿沢文香でしたから…。
疑問点を明らかにする時間すら煩わしく、ただ“早く始めてください”と切って捨ててしまったのです。

いち早く覚悟を決めた風の美波さんが立ち上がり、Pさんを抱き締めました。
状況の理解が追い付いていないPさんは素っ頓狂な声を上げましたが、それも美波さんが唇で塞いでしまいました。

愛する人と自分以外の女性の口づけ…。
まともな人間であれば一眇たりとも見ていたくないはずのその光景を、しかし、私は瞬きも忘れ見続けました。
長く静かな口づけの後、美波さんはPさんの耳元で何事かを囁くと、Pさんも覚悟を決めたようでした。

私は二人にベッドへ向かうように目線を送りました。
美波さんがPさんの手を引いてベッド際まで行き、Pさんと共にベッドへ倒れ込みました。
下になった美波さんはPさんの後頭部に両腕を絡め、先程とは比べ物にならない程激しい口づけをして見せてくれました。
私はベッドサイドに膝をつき、その熱いベーゼを間近で凝視することにしました。
二人とも口を大きく開いて、まるで凹と凹を組むように唇を重ねていました。
頬肉の向こう側では、舌同士がケリュケイオンのごとく絡み合っているのがありありと幻視できました。
お互いの口内を舌で舐り合って、唾液を啜り合って、無心で貪って…。
Pさんだけでなく美波さんも小鼻がヒクつくほどに激しい鼻呼吸でした。
しかも、相手に鼻息がかかるのも全く気にしている素振りはなくて…。
そんなことよりも、一呼吸の間すらも離れたくないという気持ちなのでしょうね。

嫌です。やめてください。お願いします。なんで私の前でそんなことが出来るのですか?
Pさん、貴方はきっと私の好意に気付いていたはずです。
それなのに、何故なのですか!? 何故そんなに酷いことができるのですか!?
酷いです! 非道! 嫌、嫌、嫌!

ここに至った経緯など全て忘れて、私は心の中で身勝手に二人を呪いました。
正しく、あの夜の再現でした。

胸の憎悪の炎が全身を焼き尽くしそうなのに。
止め処なく涙は溢れているのに。
頭を抱えた手の爪が出血しそうなほど頭皮に食い込んでいるのに。
それでも私は一声も上げずに二人を見続けていました。
やめてください、という喉元までせり上がった気持ちは、ただの熱い吐息になっていました。

私はあの夜よりもずっと興奮していたのです。


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