3:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 20:17:15.11 ID:ubwWHrg5O
――でも、そうじゃない。
「あなたのすべてを知って、すべてを感じて……もっと、もっと、悦びをわかちあいたい……♪」
彼女の双眸が、真紅に輝く。彼女の白く小さな手が、俺の頬をゆったりと撫でる。
頬に伝わるひんやりとした感触以上に、俺は背筋に寒気のようなものを感じた。
――そう。ここは事務所じゃない。同じなのは見た目だけ。
いうなれば、ここは『檻』だ。主の許しなしでは、決して出ることのできない閉ざされた部屋。
であれば、この部屋の主は誰なのか。いうまでもないだろう。
「Pさん。今夜の夢も、素敵なものにしてあげますね……♡ んっ……♡」
艶めかしい吐息とともに、ぐっと身体に力をこめるゆかり。
メキメキと異様な音が鳴り響き、同時に彼女のブラウスを突き破って黒い翼が生えてくる。
「んっ♡ あぁっ♪ もう、ちょっと……♪」
スカートの下からにゅるりと伸びる尻尾。そして最後に、頭の頂上付近に山羊のような二本の角が生えてくる。
角が伸びることには快感が伴うのか、ゆかりは頬を上気させながら身体をくねらせる。
そして、ついに山羊のそれに似た形の角が完全に生えそろった瞬間。
「ん〜〜っっ♡♡」
ずりゅりゅ、という音とともに、ゆかりの嬌声が部屋中に広がった。エクスタシーに達したらしい。
「はぁぁ………♪ やっぱり、夜はこちらの姿のほうが落ち着きますね……♪」
先ほどの乱れようから一転、優雅な微笑みを浮かべるゆかり。だがその姿は、すでに人間のそれからはかけ離れていた。
意のままに翼と尻尾を揺らめかせるその姿は、まさしく悪魔。
「……こんなものを見せられている以上、呪いの存在だって信じるしかないじゃないか」
「ふふ♪ そうかもしれませんね」
彼女は、水本ゆかりは。俺の担当アイドルであり……そして。
「では、サキュバスである私が、Pさんに呪いをかけちゃいます」
人間の夢を喰らい、精を喰らう生き物――サキュバスである。
「Pさんには『私の脚以外ではイケない』という微妙な呪いをかけましょう」
「………それ、微妙じゃないだろ。結構致命的だろ」
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