15: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2017/11/06(月) 01:44:45.60 ID:+KOxMEhE0
◆◇◆
俺はあのとき、どんなことをしていたのか自分でもよく分かっていない。
気がついたら奏の身体を抱き締めていて、奏への思いを再び伝えいて、奏と唇を重ねていて、奏に愛を囁かれた。
それから奏のお願いを聞いて、隣に奏を乗せ、彼女のマンションへ向かっている。
俺たちの間には会話は無く、時折フロントガラスの雪をどかすために動いているウィンカーが音を出しているだけだった。
俺も奏も、何を言えばいいのか分からなかったのだと思う。奏は、どんなことを考えて居たのだろう。
その間、『俺はプロデューサーとしてどうなんだ』と自問自答し続けた。どれだけ考えても、『俺は悪人だ』という答え以外出なかった。世間にバレたとき、俺一人の首だけで済めばいいと願った。
マンションの駐車場に着いてからも、互いに何も言わなかった。
ただ、エレベーターに並んで乗り込んだとき、首下の赤いマフラーにも負けないくらいに奏の顔が朱に帯びているのが分かった。
『家まで送って欲しい』という奏の言葉に込められた言外の意味を理解出来ないわけもなく。
「あっ…」
「…」
俺は、少し震えている奏の手を握った。その震えは寒さから来るものか、それとも…。
くだらないことを考えている内に、エレベーターは奏の部屋がある階に到着した。手を握ったままエレベーターから降りて、部屋を目指す。
「待ってて」
奏がそう言い、コートのポケットから鍵を取り出す。開けられたドアをくぐり、奏の部屋に踏み入れる。
部屋の前まで来たことは幾度かあるものの、中に入ったことは一度も無く、奏のプライベートな空間に立ち入った気がして、どうしてか罪悪感を覚える。
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