825:塔の主 ◆VfcsCSY7us[saga]
2019/02/05(火) 19:15:44.69 ID:gwAK1vkF0
「…これからどうしようかしら」
また同じことを呟く。
心を入れ替えて、真面目に生きる?
やっぱりアリスたちのところに戻って、仲間に入れてもらう?
「…何をいまさら」
何人もの少女たちの、身体を狂わせ、心を壊してきた。
彼女らは…最初はどんなに泣き叫ぼうとも、「ご主人様」に玩具として買われていくときは幸せそうだった。
そうやって何人も何人も偽りの幸福という名の地獄へと堕としてきた。
ああ、そうだ。
私は奴隷調教師、毒使いのウェルだ。
それしか選択肢はないではないか。
やはりあの場所こそが、自分の生きるべき場所だ。
自分の才能を最大限に活かせる天職だ。
だが、それでも、それでも…あの時の、アリスの言葉が自分の心の中に響き続ける。
「ウェルはわるいこだけど それでも ともだちになれると おもうから」
(ああ…もうっ…)
綺麗な紫髪をくしゃくしゃとかきむしるウェル。
こんな気持ちのまま、自分は奴隷調教師に戻れるのか…?
思考はぐるぐると回り続ける。
「お前。毒使いのウェルだな」
突如振ってわいた素性を指摘する声。
「!?」
思考のループが途絶え、ウェルはビクリと身体を震わせた。
「だ、誰…」
声のした方向には一人の冒険者と思しき男が立っていた。
腰にはショートソード、身体はレザーアーマーというありふれた装備。
…本当に知らない顔だ。
「誰でもいいさ。賞金首『毒使いのウェル』。その首…いただくぜ」
そう言って男はショートソードを引き抜き、構えた。
(バウンティハンター!? くっ、こんな近くに来るまで気付かないなんて!)
自分の迂闊さに舌打ちしながらも、そういえば以前に自分の手配書を見たことがあったなとウェルは思い出していた。
『毒使いのウェル 賞金額2000万エイン ※生死問わず』
それにしても街中に現れたことを早速嗅ぎつけられるとは、バウンティハンター(賞金稼ぎ)どもの情報網もなかなか馬鹿にできない。
だがウェルにとって幸運だったのは、この男は賞金稼ぎとしては三流だったということ。
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