830:塔の主 ◆VfcsCSY7us[saga]
2019/02/05(火) 20:15:02.04 ID:gwAK1vkF0
「居たぞ!賞金首だ!」
状況を破壊するかのような無粋な叫びが裏通りに轟く。
賞金稼ぎどもだ。
足元に倒れているやつの仲間か商売敵かはわからないが、何人もの武装した連中がウェルたちに向かって駆けつけてくる。
はん、と小さく鼻を鳴らすとウェルは向かってくる連中に向けて触手を放つべく手のひらをかざす。
「空気が読めないわね―」
しかし思った以上に数が多い。
今の自分に奴らとやりあうような力が残っているかどうかは怪しかった。
(これは不味いかもしれない…)
ここは戦闘よりも逃げの一手か。しかしその先に既に追手が回り込んでいる可能性も捨てきれない。
進退窮まったか、とウェルが覚悟する。
しかしそんなウェルを背にして、賞金稼ぎたちの前に立ちはだかる小さな影があった。
「アリス…?」
既視感がよぎる。
「にげて ウェル」
前にもあったはずだ、こんな状況が。
「あのときとおなじさくせん。こんどはせいこうさせるから」
言われてウェルがハッと息を呑む。
この状況は、オークたちに襲われた時と同じ。
「こんどは きっといっしょに…」
その澄んだ瞳には もう迷いの色は無い。
アリスは選択したのだ。
ウェルと共に行く未来を。
(ああ…!)
ウェルはアリスの背を前に感極まっていた。
(アリス。ありがとう。私を選んでくれて)
熱い涙が零れ落ちそうになるのを必死でこらえながら、刹那ウェルは素敵な光景を想い描いていた。
アリスと一緒の食事。
アリスと一緒のおしゃべり。
アリスと一緒におふろ。
アリスと一緒に、ずっと一緒に。
「アリス」
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