ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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596: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2022/02/08(火) 01:39:19.62 ID:r3z1/x7M0
男「……それじゃあ、まずはお互いに自己紹介と行こうじゃないか。 おれはスミス。ジョン・スミスさ」並びの悪い汚れた歯を見せてニヤニヤ笑いを浮かべている情報屋……

アンジェ「トムよ」

男「あんたみてえな若いお嬢さんが「トム」ってことはねえと思うけどなぁ」

アンジェ「そんなことはどうだっていい……話によると、あなたは「落とし物」を見つけるのが上手だと聞いている」

男「まぁな……ブツが何かは知らねえが、たいていのもんなら見つけ出してご覧に入れるぜ」そう言うと大げさに腕を広げてみせた……

アンジェ「結構。 今回こちらが探しているのは数日前に公園で「私たちの共通の友人」が落としたものよ……もしも見つけてくれるというなら、それ相応の報酬を支払う用意があると「友人」は言っている」

男「そうかい? しかしロンドンの公園って言ったって範囲は広いし、探すってなると人手がいる……それに人を雇って頼むとなりゃ、ただ働きって訳にもいかねえしな」

アンジェ「それで?」

男「そうさなぁ……人手やらなんやら、もろもろ込みで二百ポンドっていうのはどうだい?」

アンジェ「……五十ポンド」

男「五十だって? お嬢ちゃん、ちょいと冗談がキツいんじゃあねえのか? そんなんじゃあロンドン市内どころか、この店の中だって探せやしねえよ」

アンジェ「五十ポンド……ロンドン市内の公園をちょっと探して「なくし物」を見つけるのに、そこまで払うつもりはない」まさしく「けんもほろろ」といった口調で突き放す……

男「そうかい? だったら自分で探してみりゃあいいんじゃねえのか」

アンジェ「私たちもそこまで暇じゃないから、早く済ませる手段としてあなたに連絡を取ったにすぎない……それに、こちらがその気になれば無料でその「なくし物」を入手することだって出来る」立場を行使することをためらわない王国情報部のエージェントならこういうだろうと、冷たく高圧的な態度でそっけなく言った……

男「分かった分かった、百五十でいいよ……それ以上は無理だぜ。人手を使おうって言うんだからな」

アンジェ「百ポンド」

男「分からねえかな、あのブラッディ(くそったれ)なだたっ広い公園から一枚の紙きれを探すなんていうのは並大抵の苦労じゃあねえんだぜ?」

アンジェ「そう……ところで私はいつ、探し物が「一枚の紙切れ」だと言った?」

男「……」一瞬「しまった」という表情を見せたが、すぐまたニヤついた顔に戻る……

アンジェ「どうやら納得いただけたようね。 それでは、次回会うときに「一枚の紙切れ」を渡していただく……まずは手付けとして半金の五十ポンドを渡しておくわ」

男「……ああ」

アンジェ「お互いに満足の行く取引が出来るよう、くれぐれも余計な小細工はしないことね……それでは失礼」

…裏通り…

アンジェ「ご苦労だったわ、ちせ……貴女があの店の『ブルドッグ』を牽制していてくれたおかげで、こっちはあの『チェシャ猫』じみたニヤニヤ男だけに注意していられた」

ちせ「……うむ。しかしどうにもあの男は虫が好かぬ」

アンジェ「そうね……これはただの勘だけれど、あの情報屋はきっとおかしな真似をしてくるような気がするわ。 ……例えば、いま私たちを尾けてきている男のような……ね」

…ごみごみとした裏路地をすいすいと歩いて行くアンジェとちせ……そしてその後ろから足音を立てないよう、距離を開けて二人を尾行している一人の男……男は薄汚れたチョッキと鳥撃ち(ハンチング)帽とだぶだぶのズボンで、ゴミ漁りでもするような態度を取っているが、尾行を気付かれないようにするには二人との距離が近すぎ、また人の少ない裏通りで「たまたま行く先が同じ方向」と言うのも少し無理がある…

ちせ「どうするのじゃ……撒くか?」

アンジェ「いいえ、馬鹿にわざわざ「こっちは尾行に気付いているぞ」なんて教えてやることはないわ……どのみちあの格好で表通りに出られはしない」

ちせ「……ではどういうつもりなのじゃろう」

アンジェ「おそらくこちらにコンタクト(協力者)や支援要員がいるかどうか確かめたいのね」

ちせ「して、もし支援要員がいないとなったら……」

アンジェ「おそらくはこわもての数人でもかき集めてこっちを脅し、値段をつり上げるでしょうね」

ちせ「しかし、仮にも相手は王国情報部じゃぞ……そんなことをするじゃろうか?」

アンジェ「ええ、するわ……内務卿を相手に商売が出来ると思っているような愚か者なら」

ちせ「ふむ、愚か者か」

アンジェ「そう……元来、裏社会の人間というのは同じ社会の人間を相手に必要以上の嘘やごまかしはしないものなのよ。 何しろ保険もなければ裁判所もない世界だもの。信用だけが評価を決める中で、年中でまかせを言ったり取引相手をごまかすような人間は長生き出来ない」

ちせ「ではなぜ……?」

アンジェ「おそらく、私たちが連中にとっては「よそ者」で、なおかつ年若い女でくみしやすいと見たから」

ちせ「困ったことじゃのう」

アンジェ「ええ、きっと今ごろはどうやって二百ポンド以上の儲けに出来るか考えているでしょうね……」




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