ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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617: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2022/09/16(金) 01:41:27.09 ID:7/yvy8yf0
…数時間後…

エージェント「……どうだった?」

若手「寝てたので起こしてきました……こんな時によく眠れるもんですね」

エージェント「連絡を取って「壁越え」の計画が動き出してからと言うもの、ベッドに入ってもまんじりともしなかったんだろう……さ、準備を整えるんだ。 それと、壁越えをするときの身体検査で引っかかったら厄介な事になるから、銃はここに置いていくんだよ」

若手「分かってます」


…女性エージェントは銃と入れ替えに床下にしまい込んであった衣服を身につけていた……黒い厚手のボンネットで隠しがちにした顔と、貴族婦人にしてはどこか派手で、かといって街中の主婦というには金がかかっているという印象を与える濃い紅のドレスは、貴族や金持ちがこっそり一晩楽しむ時にお相手をするような女性に見える……化粧もそういう女性にふさわしく心持ち派手にはしているが、かといって興味本位の目を引くほどでもない…


エージェント「どう、準備はできたかい?」

若手「ええ、僕なんかはごくあっさりしたもんですから……」


…若手エージェントは鳥打ち帽(ハンチング)に茶色の上着と同系統のズボン……誰が見たって下っ端の雑用係にしか見えない格好で、上着の裾は生地がすり切れ始め、ズボンは寸法が足らずくるぶしが見えるほど、おまけに革靴もすっかり艶がない…


エージェント「ああ、それならいいだろう……コヴェントガーデン(青果市場)の御用聞きか、商店の下働きにしか見えないね」

若手「どうも……」と、亡命希望者の貴族が寝室から出てきた……髪にいくらか寝癖が付いていて服もしわがよっているが、少しは体力を回復したらしく、いくらかましな様子になっている……

エージェント「よく眠れました?」

貴族「ふん、馬鹿な……あんな寝心地の悪い寝台は初めてだ」

エージェント「まぁまぁ、壁を越えたらいくらでも柔らかいベッドで眠れますよ」

貴族「そのくらいは当然だろう。 わしがどれだけ貴様らの政府にとって有用だったと思っているのだ」

エージェント「だからこうして壁越えをお膳立てしているんですよ……そろそろ迎えの車が来ます」

貴族「そうか」

若手「ん、ちょっと待って……」

エージェント「どうした?」

若手「いえ、エンジン音が聞こえたような気がします……」

エージェント「あと十五分はあるけど、間違いないか?」

若手「いや、もしかしたら聞き違いかもしれません……見てきますか?」

エージェント「いい。下手にうろちょろして人目をひくようなもんじゃない……」窓から見える歩道には玄関の灯りが弱々しく光を投げかけているが、そこにいくつかの影が動いた……

エージェント「っ!」

王国エージェント「動くなっ!」


…安普請の玄関ドアを蝶番(ちょうつがい)ごと蹴り破って屋内へなだれ込んできた王国のエージェントたち……いずれも私服姿で、手にはそれぞれ三インチ銃身のウェブリー・スコットだの、もっと銃身の短い「ブルドッグ」タイプのピストルだのを握っている…


若手「くそっ!」とっさに居間の椅子を投げつけて相手をひるませ、敵方のピストルをもぎ取ろうする若手エージェント……

エージェント「……ちっ!」若手が時間を稼いでいる間に亡命希望者の手をひっつかみ、とっさに裏口へと通じている台所に駆け込む…

王国エージェントB「そこまでだ、悪あがきはよせ」

エージェント「……くっ!」裏口からも突っ込んできた王国エージェントの一人にピストルの銃身で横面を張られた女性エージェント……右頬に強烈な打撃を受け、口の中が切れたらしく血の味がする……

若手「かは……っ!」もみ合っていた若手も相手に投げ飛ばされ、ひっくり返ったところで脇腹に蹴りを入れられた……

貴族「……こんな……ここまできて……」

王国エージェント「よし、全員押さえたな……本部に無電を打ってこい」下っ端らしい一人が表に駆け出していくと、指揮官格のエージェントが冷たく言い放った……

王国エージェント「お前たちには国歌転覆、スパイ、文書偽造、武器の不法所持といった容疑がかけられている……うまい言い訳を今のうちに考えておくことだな」

………

…




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