ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
��↓ ��1- ��覧 ��板 ��20
645: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2023/05/03(水) 01:09:35.06 ID:IhOEUViF0
ドロシー「……かくして私とアンジェは無事エージェントとしてデビューすることになったわけだ」

ベアトリス「なるほど……でも、訓練を終えた段階でスパイになりたくないっていう人もいるんじゃないですか?」

ドロシー「無論そういうやつは一定数いる。基本的にエージェント候補になりそうなやつって言うのは退役、あるいは現役エージェントが役に立つ地位や素質を持っている「これ」って人間を管理官に伝え、そこから「スカウト」…ポインターなんて言ったりもするが…の連中が身辺調査をした上でリクルートするようになっているんだが、よっぽど覚悟か決まっているか、性に合っているやつじゃない限りはどこかの段階でおっかなくなって二の足を踏んじまうもんさ」

ベアトリス「分かります……でも、それじゃあせっかく訓練したのが無駄になっちゃいますね」

ドロシー「そこさ。情報部としては手間をかけて養成したあげく、施設や訓練内容みたいな機密を知った人間を「はいそうですか」と自由にするわけにはいかない」

ベアトリス「じゃあどうするんですか?」

ドロシー「そういう場合はたいてい脅迫か懐柔だな……訓練生としてこなす課程の中には多かれ少なかれ法に触れるものがあるし、訓練生自身も報酬目当てのやつとか、貧民街出身のやつなんかは前科(まえ)があったりして「叩けばホコリが出る」ような連中が多いからな」

ベアトリス「そうなんですね……」

ドロシー「ああ。だから訓練の課程を終えてから「情報部員として着任するのはイヤだ」なんて言ったら、別室に呼び出されて硬い表情でこういわれる事になる……「そうかね。だが君が今までしてきたことの証拠は全て我々が握っているんだよ? 君を一生『ボタニー・ベイ(オーストラリアの犯罪者流刑地)』送りにするのに十分な証拠がね」……ってな。なにしろ相手は国の機関だし、証拠をでっち上げるのだってお手の物だ。そもそも巻き毛のカツラをつけた裁判官たちだって「スパイの訓練学校に通っていた」なんていう話を信じてくれるわけがない」

ベアトリス「なるほど」

ドロシー「まぁ、あんまり追い込んで寝返りを打たれたりしちゃ困るから、脅迫に訴えるのは「最終手段」で、たいていは別の手段だがな……」

ベアトリス「……別の手段?」

ドロシー「ああ。そういった後ろ暗い経歴のないきれいなやつ……あるいはちょっとした脅しだけで言うことを聞かせられそうな小心者を従わせるのに使う手段だ」

ベアトリス「どんな手段ですか?」

ドロシー「そうだな、基本はこうだ……普通、課程を終えた訓練生は本格的にエージェントとして活動を始めるまで数ヶ月間「見習い」の期間がある。例えばあまり重要でない国に入国して、そこでカバーが馴染むまでごく当たり前の日常生活を送り「任務」と称して新聞記事を切り抜いて翻訳したり、大使館の小物を形ばかり尾行したりして、その情報を本国に送るだけっていう単調な任務だ」

ベアトリス「そういう任務もあるんですね」

ドロシー「ああ。もっとも私やアンジェの場合はコントロールが「植え込み」を急いだから、そういう期間はほとんどなかったがな……」

ドロシー「……ともかく、どういうわけかそんな任務にしちゃ本部の金払いがいい……例えば暮らしていくのに月あたり一ポンドもあれば充分なのに、十ポンドも送ってきたりする。管理官に聞くと「なに、これは『予備費』っていうことで取っておくといい。服だって一張羅というわけにも行くまいし、あまりみすぼらしい暮らしをしているとかえって怪しまれてしまうからね」ってなことを言ってくる」

ベアトリス「ずいぶん親切なんですね? それで手懐けるんでしょうか?」

ドロシー「無論、それで尻尾を振るような連中ならそれでいい……だが、もしその後でエージェントになりたくないなんて言うと大変だ」

ベアトリス「どういうことですか?」

ドロシー「この間まで何だかんだと金を渡してくれた管理官が急に冷たくなって「この経費の使い方はいったいなんだ?」とくる」

ベアトリス「え? だって使っていいって言ったのは管理官なんですよね?」

ドロシー「ああ、その通りだ。そして、そういう風に返事をしたとしよう。管理官はきっとこう言うだろうな「バカな、私はあくまでも『予備費』だと伝えたはずだ。無駄金を使えと言った覚えはない。それで一体この浪費をどうする気だ?」とね」

ベアトリス「そんなの反則ですよ「使っていい」って言っておいて、使ったら「無駄遣いだ」だなんて」

ドロシー「ああその通り、そしてあちらさんはそれが狙いなのさ……事実としてバカみたいに経費を使っちまった以上、返すか公金横領で逮捕されるかのどっちかしかない。だがエージェントのひよっこにそんな大金なんてありゃしない。となると後は泣きべそをかきながら言うことを聞いて任地に向かうしかないわけだ」

ベアトリス「それじゃあその使い込んじゃったお金はどうなるんですか?」

ドロシー「人によりけりだな。エージェントとしての成績が良ければチャラにしてくれるし、成績が悪けりゃ返し終わるまで報酬から天引きされる……中には派手に使っちまったあげく十数年経っても引退できずに、下働きをさせられてる奴さえいるって話だ」

ベアトリス「うわぁ……」

ドロシー「だからさ、お前さんみたいに仕方なしにやっているくらいがちょうどいいんだよ……『秘密情報部員』なんていうと格好いいように聞こえるが、実際はケチな本部をせっついて活動費をねだったり、冷たい屋根瓦の上で一晩張り込みをしたり、いい目にあえることなんて滅多にないんだからな」

ベアトリス「でも、その割にドロシーさんはいつも楽しげに振る舞っていますよね?」

ドロシー「そりゃあ私の境遇から言えばエージェントとして送る生活の方がはるかにマシだからさ。いい食事に上等な酒、可愛い女の子との逢瀬……ドブの中を這いずり回るような生活と比べたら天と地ほどの違いだろ? どのみち「辞める」といって辞められるようなもんでもないし、だったらせめて楽しめるところは楽しまなきゃな♪」

ベアトリス「……」

ドロシー「なぁに、そんな深刻な表情(かお)をすることはないさ。これでもパクられる事のないよう気を使ってもいるしな……無事に引退したらどっかの田舎に邸宅でも買い込んで、ここでの刺激的な毎日を思い出しながらのんびり過ごすさ」

ベアトリス「そう、ですね……」




<<前のレス[*]|次のレス[#]>>
784Res/2273.62 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice