ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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653: ◆b0M46H9tf98h[sage saga]
2023/07/07(金) 01:06:28.36 ID:7yC1rj5o0
…旅行初日・サウスエンド港…

ドロシー「あの船だ……さ、乗ろう」

アンジェ「ええ……」

ちせ「うむ」

…ロンドンから鉄道に乗り、テムズ川の河口にあるサウスエンドで海峡横断の客船に乗船する予定のドロシーたち……ドーヴァー海峡を渡るのなら定期便の飛行船を使ってもいいのだが、船に比べると乗れる客の人数が少ないので目立ち、しかも王国内でのきな臭い事件が続いているために手荷物をはじめとする検査も厳しい……そこでコントロールは週末旅行の客を多く乗せる定期旅客船の切符を用意していた…

オフィサー「ようこそ「レディ・サザーランド」号へ、お若いご婦人方……ボーイに手荷物を運ばせましょう」

ドロシー「ええ、ありがとう。それではこれをボーイさんに」手際よく、裕福な令嬢としてふさわしい額のチップをオフィサーに握らせる……

オフィサー「これはご丁寧に……お嬢様方の荷物だ、丁寧に運ぶようにな」

ドロシー「よろしくお願いするわ……ん?」

ちせ「……このくらいは自分で持てるから無用じゃ」

ドロシー「……ちせ、これも連中の仕事なんだから運ばせてやれ。押し問答なんかしていると目立つ」

…スマートなボーイが荷物を受け取って運ぼうとしたが、ちせはそういったやり方に慣れていないので手荷物を自分で持とうとし、預かろうとしたボーイも困惑している……ドロシーがとっさに小声で耳打ちした…

ちせ「むむ、言われてみれば……しかし、手荷物の一つまでボーイに運ばせるなどというのはどうにもむずがゆいのう」

ドロシー「だがそういうものなんだ……ではお願いしますね」

オフィサー「はい、もちろんでございます。 それでは船室へご案内いたしましょう」

…そうこうしているうちに「ボーッ……」と長く尾を引く汽笛の音が響き渡り、客船が凪の海に向けてゆっくりと進み出した…

ドロシー「ふー……ここまでは順調だな」

アンジェ「順調もなにも、まだ始まってすらいないでしょう」

ドロシー「いーや、ここまで来りゃあ半分は成功したも同然さ♪」

アンジェ「楽観的で結構ね」

…数時間後、ル・アーヴル港…

ドロシー「さ、着いたぜ」

ちせ「うむ……ここがフランスなのじゃな」

ドロシー「正確に言えばアルビオン王国の「ノルマンディ飛び地」だからフランス領じゃないけどな。本来なら旅券もいらないんだが……」

アンジェ「情報部員や密輸業者の出入国が後を絶たないものだから、ノルマンディ飛び地では旅券の審査がある」

ドロシー「そういうこと……もっとも私たちは学生っていうカバーがあるからな、そう厳しくはやられないだろう」

…検査場…

係官「学生ですか……渡航の理由は?」

ドロシー「観光です」

係官「なるほど。 荷物の中に百ポンド以上の現金、酒、煙草、絹製品等の申告すべきものはありますか?」

ドロシー「いいえ」

係官「よろしい……ではよい旅を」

ドロシー「どうもありがとう」

ちせ「ふぅ、ああいった手続きはなかなかに緊張するものじゃ」

アンジェ「そのうちに慣れるわ」

ドロシー「……ま、ともかく無事に通れたな。それじゃあそろそろ着替えと行きますか」

…港のそばにある小さな宿屋に入ると、宿のおかみらしいおばさんにパスポートの名前とはまったく違う姓名を告げるドロシー……渡された鍵を受け取って部屋に入ると、中にはすでにドロシーたちの荷物が届けられていた……

ドロシー「よし、ばっちりだ……アンジェ、そっちは?」黒を基調に深い赤紫やえんじ色をあしらった少し派手なドレスと日傘、それに無垢な女の子をたぶらかす、プレイガールらしい下心をのぞかせるような色っぽい笑みに合う濃いめの口紅を引いた……

アンジェ「ええ、問題ないわ」

ドロシー「いいね。どっからどう見てもフランス人だ……あの、すみませんが英語は話せますか?」

アンジェ「ペルドン(なんでしょうか)?」

…アンジェはフランス独特の青みを帯びた「グリィ(灰色)」をベースにした抑えめなドレスにつばの広い婦人帽で、派手なドロシーの陰に溶け込むようかのような装いでまとめている……ちょっと小首をかしげて英語が分からないようなフリをすると、まるで本当に英語が分からないように見える……

ドロシー「ふ、まるでホンモノだな……それじゃあ行くか」


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